杉江松恋不善閑居 原稿料のことを編集者が言うようになった。いいことだ。

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某月某日

書かなければならない原稿の量からすると、一日に最少でも二本は終わらせていかないと週末を迎えることができない。一日二本、努力目標は三本、あわよくば四本、と考えて机に向かったのだが、折からの酷暑のせいかどうにも前に進むことができない。昼頃までうんうんと唸っていたら急に閃いたことがあって、そこからはするすると言葉が出てきた。そういうものだ。勢いに乗ってもう一本書いてしまおうとしたが、時間切れとなる。午後七時から朝日カルチャーセンター新宿教室のリモート講義なのである。そこで仕事としては時間終了。残った一本は九割方できていたので、本日起床してすぐに終わらせた。一応これで二本だ。

この二本で稼いだ原稿料をもって、七月までに稼がなければならない額への進捗率は64.44%になった。実はこれ以外に昨日は、下読みの選評を一つ送っていたのである。本来ならその分の選考料も加算したいところだが、変わった賞で前払いになっている。つまり読む前から、これだけの本数があるので●●万円払います、と振り込んでくれるのだ。ありがたいことで、金だけもらって選考委員が逃げたらどうするのだろうと思うが、そういう人間は選ばないということだろう。逃げたら絶対悪評が立つし。

最近はどこの出版社も金額を明示して依頼をしてくるようになった。中には定型で金額と〆切と分量を書いた文書を送ってくるところもあって、非常に便利である。これは、口頭ではなくメールで仕事を依頼するのが一般的になったからだと思う。カネのことを口にしにくい、という人は多い。そういう編集者でもメールなら金額を書くことはできるのだ。いい流れである。

こっそりここに書くのだけど、先日ひさしぶりに原稿料の出ない仕事というものをした。依頼したときにこちらが確認しなかったのが悪いけど、無かったのである。掲載誌を送ってきてそれだけ。しまった、そういう条件だったら引き受けかねる、と先に言うべきだった。これは私の失敗だから先方の責任ではない。ただし、原稿料をいただいていないので仕事ではなかったという認識である。趣味だな。趣味につきあったということで納得した。

原稿料のことは最初に言ったほうがいいですよ、みなさん。私もこの仕事を長くやっているけど、それでも間違いをしてしまう。最初に原稿料の取り決めをしてから双方がそれぞれの作業に入る、という当たり前のことが出版界ではなかなか行われずにきた。それが改善されつつあるのだから、流れに掉さしていくべきなのだ。

ちなみにお安くしておきます。地方への出張案件も可。古本屋が鉄道や徒歩などでは生きにくいところにある場合、車を出してくれるという条件でさらにご相談に乗れます。

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