杉江松恋不善閑居 リヤカー古本屋・沼津「山仲」

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某月某日

(承前)

静岡市葵区の書肆猫に縁側で、リヤカー古本屋の情報を得た。沼津市の古本屋であれば、片浜駅前の書肆ハニカム堂に行けば情報も得られるだろうと急行したところ、店主に意外な人に引き合わされた。なんと件のリヤカー古本屋こと、山仲のご主人だったのである。

青春18きっぷの期間が終わった1月のとある火曜日、またもや東海道本線に乗り、沼津駅で下りた。まずは駅前の仲見世商店街のアーケードを抜けて、先年営業を終了した平松書店跡地へ。30年前の沼津は古本屋営業の活発なところで、今は亡き沼津西武では古本まつりまで開かれていた。それもすべて夢のまた夢で、孤塁を守っていた平松書店も今はない。すっかりスケルトン状態になった書店を拝んで、元来たアーケード街ではなく、バス通りのほうを駅へ向けて引き返す。

数十メートルで通りかかったのがチャトラコーヒーである。沼津の新たな文化拠点になっていて、おもしろいことに興味のある人が集う喫茶店であるという。その店頭に、毎週火曜日山仲さんが古本を積んだリヤカーを引いてくる。噂のリヤカー古本屋である。近寄るとご主人が気づかれたので、挨拶をした。このあいだはどうも。

リヤカーの上にはさまざまなジャンルの本が置かれている。雑本と言うべきだが、中には興味深い文学書もある。昔の絵本など、カラフルで目を引く商品は店頭の足元棚に別途枯れている。リヤカーの荷台には地元の方が作られている工芸品や、ご主人も参加されているミニコミ誌「月刊イヌ時代」も置かれていた。

もともと別のお仕事をされていたご主人がリヤカー古本屋を開業されたのは2023年7月のことで、平松書店や新刊のマルサン書店が閉店したこともあり、本屋が一時的に消えていた沼津駅前に新しい風を吹かせたということで話題になった。NHKローカルの番組で取材をされたほか、あちこちで記事としてもとりあげられたという。毎週火曜日はチャトラコーヒー前、それ以外に行商もするというやり方で、老若二人の男性コンビが始められたのである。詳しくはこちらの記事にて。

記事の写真に出ているリヤカーは、焼き芋屋が引くような屋根のあるものだったが、このときチャトラコーヒー前に置かれていたものはもう少し小さく、屋根のない引っ越しに使うような車だった。

「ああ、最近は風が強いので、車高があると煽られて危ないんです。だからこの小さいほうのリヤカーを引いてきています。あっちの大きいほうのリヤカーは、今度出す店舗の中で什器として使うことを考えています」

そうなのである。すでに物件を契約済で、2024年内の開業を目指して山仲は準備中だそうなのだ。場所は沼津御用邸記念公園そばというから、バスで15分ほど、海岸近くということになる。ただし、チャトラコーヒー前の営業は原点だから、止めることはなく続けていきたい意向だとか。おもしろい試みだし、仲見世商店街の名物にもなりうると思うので、ぜひそうしていただきたいと思う。

私がお話した店主はお二人いる中のお若いほうで、古典芸能にも関心があり、アマチュア落語家・山仲家馬沈としても活動しておられるという。ちょうど1月には沼津でお気楽寄席という演芸会もあった。機会があったらお近くの方はぜひ。

数冊本を購入したあと、ご主人から声をかけていただき、一緒に記念撮影をした。写真は山仲のインスタグラムにも上がっているので、そちらもご覧ください。毎週火曜日と決まってはいるものの、臨時休業することもあるようなので、営業日はインスタグラムを確認したほうがよさそうだ。

これからもがんばってもらいたい。今度来た時はリヤカーか、それとも新たな店舗の営業か。

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