杉江松恋不善閑居 「うる星やつら」第1話「かけめぐる青春」・「絶体絶命」&ProjectHRO進捗率60%

Share

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存Evernoteに保存

某月某日

今抱えている仕事。レギュラー原稿×4、イレギュラー原稿×2(解説×1、書評×1)。やらなければならないこと。の・ようなものの準備×1。ProjectHRO×1。

(※アニメ「うる星やつら」第1話についてけっこう詳しく書いていますので、まだご覧になっていない方は注意ください)

商業原稿を二つ終わらせた後でProjectHROをぎりぎりまで書き、そのあとは池袋コミュニティカレッジの講師へ。帰宅してまた原稿を書いていたら、気が付いたら「うる星やつら」の始まる時間になっていた。Amazon Primeで観ようと思っていたのだが、こうなったら視聴しない理由はない。緊張しながらテレビをつける。41年前よりも緊張している。主題歌がAパートの途中に挟み込まれる形らしくて、葉巻型の母船が地球にやってくる導入部から物語が始まる。昭和版では草野球のところに諸星あたるが通りかかり、打球が顔に当たって、錯乱坊に「お主の顔、救いようもないほど悪い」と言われる展開だった。令和版は原作に忠実で、橋の上で三宅しのぶに振られる場面から始まる。昭和版は

草野球の選手A(村山明)「レフト、バックー!」

同B(千葉繁)「馬鹿は当たるとでかいな」

同「(ふらふら歩くあたるの横で顔を出さずに)当たる、当たるぞ」

諸星あたる(古川登志夫)「ん、俺の名前を呼ぶのは(当たる)」

という展開だった。だから最初に発声したのは村山明である。

錯乱坊が出てからの展開はほぼ原作通り。原作&昭和版は「救いようもないほど悪い」と言った次のコマ&カットで錯乱坊が傷だらけになっており、あたるによってボコボコにされたことがわかる。ここは当時アニメージュ(だと思う)で、漫画の省略技法を使ってアニメはスピーディに進めていく、と押井守が語っていたので印象に残っているカットだ。令和版では傷だらけの錯乱坊を描くのがアウトなのか包帯でぐるぐる巻きにして見せた。

ラムが登場する場面に「ラムのラブソング」アレンジが流されたのはファンサービスだろう。ここからほぼ原作通りの展開だが、元の「かけめぐる青春」では8日目にあたるがラムにしがみついてブラが取れる→9日目に胸を隠してジャンプ力が半減していることを知る→その夜しのぶに「勝ったら結婚してあげる」と言われる→10日目、という流れ。ここを入れ替えて「結婚してあげる」→10日目に初めてしがみつきブラを取るということになっていた。細かな違いだが、あたるがしのぶの言葉で発奮したことを示したのだろう。

原作・昭和版との違いは、10日目にあたるが「結婚じゃ」と叫びながら追いかける場面で、その必死さにラムが顔を少し赤らめるという演出があること。ここでラムがあたるに惚れたんだな、ということがわかる。実は、ラムがなぜあたるを好きになったのか、それはいつだったのか、ということは原作に表現されておらず、ファンの間でも議論になったりした。高橋留美子とファンの懇談というような企画でも定番の質問になっていたと記憶する。そこをきちんと処理したのだろう。

これでAパート「かけめぐる青春」終わりだが、最後にラムが「うち、ここで一緒に住むっちゃ」と宣言する。ということは第2話「やさしい悪魔」と第3話「悲しい雨音」は飛ばすわけだ。第3話は実は、アニメ版のメガネ・チビ・カクガリにあたるキャラクターの初登場回である。パーマはコースケだから第1話から出ている。これを飛ばすということで、いよいよ四人組の出番はなさそうなことになってきた。とりあえず第7話「憎みきれないろくでなし」でどうなるか。

Bパートは「絶体絶命」。ということはさくら初登場の「あなたにあげる」も飛ばすということだ。これはやらないのではなくて、校医として赴任する回にまとめる意図だろう。「絶体絶命」はしのぶ・ラムとの三角関係を描いた回で登場人物も最小だから、キャラクター紹介の「かけめぐる青春」とまとめるのにはちょうどいい。昭和版も中途の遊びを除いてはほぼ原作通りにアニメ化していたはずである。電話のやりとりが原作では「日曜の朝はいっしょにお風呂にはいるっちゃ」であるところが「土曜の夜は子供を作るっちゃ(うろ覚え)」になっているぐらい、またコミックス97~98ページの、あたるが母親に叱られる場面、最初に外出して雷に打たれる場面が省略されているが、あとはほぼ原作通りであった。ニュースの解説を大相撲のミドロヶ淵親方がやっているというところまで忠実である。ただし原作では本場所の中継でなぜかニュースまで解説しているというギャグなので、それを省略すると単に太った人が解説者になっているだけに見える。なお「絶対絶命」はしのぶが初めて怪力を発揮したという意味でも重要な回である。

全体的に見てよい原作のアニメ化であった。忠実に再現する、というスタッフの意志は、舞台を現代に置き換えず1970~80年代の昭和のままで留めるという設定にも現れている。携帯電話もインターネットもない世界でのうる星やつらだ。

オープニングとエンディングには昭和からのファンへの配慮がちらほらと見えた。オープニングに過去の原作やゲームソフトのカットが挿入される(昭和版のアニメからはなし。版権の都合か)のもそうだし、特にエンディングだ。星が流れる演出は「宇宙は大ヘンだ」で定着した昭和版オープニング・エンディングのメインイメージだし、それ以外にも明らかに南家こうじを意識したカットがある。たとえば、画面下に丸がパッパッパッと出てあたるたちの顔が切り替わるのは「パジャマ・じゃまだ」のタイミングをそのまま使っているようにも見える。それ以外に後半でラムが回転しながら漂っていくカットは森山ゆうじの「CHANCE OF LOVE」を意図したものに見えたが、これはうがちすぎかもしれない。

これらは昭和のファンのことも忘れたわけではありませんよ、というメッセージだろう。

他に気がついたことを書くと、原作では出てこない鬼星(今回はなんという名称にするのだろう)の乗員がいっぱいモブで出てくるのはいらないんじゃないか、とか、諸星家のデザインは原作準拠だから友引高校もそうなるだろうけどそうなると「愛はブーメラン」の出番はないな、とかいろいろあるが、きりがないのでこのへんで。あと、今回あたるの父を演じている古川登志夫は、絶叫するとやはり諸星あたるになるのがおもしろかった。

ProjectHRO進捗率60%。今日中になんとか80%まで到達したい。

Share

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存Evernoteに保存