杉江松恋不善閑居 西小山・「ハイカラ商店街まるや」と立川談四楼・玉川奈々福二人会

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某月某日

今抱えている仕事。レギュラー原稿×4。イレギュラー原稿×1(解説)。

やらなければならないこと。主催する会の準備×1。

昨日は都内某所にお住いの、浪曲界の生き証人ともいえる方をお訪ねしてきた。当たり前に宮川女左近とか岩崎節子とかの若い頃の写真が出てくるのでどきどきした。お宝の山だ。すぐに辞すつもりでいたのだが、写真に見とれている間に2時間近く居座ってしまった。

訪問の用件は玉川祐子・杉江松恋(書き手)『100歳で現役! 女性曲師の波瀾万丈人生』(光文社)見本をお渡しすることである。さて、どういう風に読んでいただけるか。

この本はそうした浪曲の見巧者のために書いたという一面もあるのだが、もう一つ大事な使命として、元気な高齢者の見本を世間にお届けすることがある。全国の高齢者に、玉川祐子という人を知ってもらいたいのだ。そのためには古典芸能という枠を超えて、広い読者層に到達させる必要がある。もしこの記事をご覧の方で、それならこういう方にお送りしてみたらうまく広まるかもしれませんよ、という先をご存じだったら教えていただけないだろうか。祐子さんに無理をさせるわけにはいかないのだが、本をお送りするなどの努力はこちらでいくらでもするので、ぜひご紹介いただきたい。

帰りがけに西小山、ハイカラ商店街まるやに寄る。浪曲関連のものは何かないですか、と訊ねたところ、おやじさんが、確かあったはずだ、と言い出して捜索に。しかしよくよく聞いてみると、それは大会のポスターで、昭和四十年ぐらいのものだという。おやじさん、それって数ヶ月前に私が買っていったやつじゃ、とは言いだせず捜索をはらはらしながら見守った。

午後六時開演でしのばず寄席特別公演「立川談四楼・玉川奈々福二人会。午後七時開演だと思っていたので慌ててしまった。金曜日なのに、なんでこんなに早いんだ。おかげで開口一番は聴き逃してしまう。

もう半分 談四楼

浪曲シンデレラ 奈々福・まみ

天保水滸伝外伝ボロ忠売り出す 奈々福・まみ

人情八百屋 談四楼

「人情八百屋」は浪曲師・春日清鶴の十八番。八月なので「ぼんぼん唄」かな、と思ったのだが、もしかすると奈々福さんに少し時間を譲る配慮だったのだろうか。しかしやはりいい。こどもたちが八百屋にすがる場面ではいつもほろりと来てしまう。「もう半分」は、ひさしぶりだったので大事な台詞が抜けてしまった、と「人情八百屋」の冒頭でばらされていたが、これはこれで無くてもいいような気がする。棒手振りが娘を吉原に売って三十両こしらえるというくだりなんで、現代のお客には陰々滅々が過ぎる気もするのだ。これを外して、なんか三十両持っていたんだけど、でもいいのでは。

お客の中に浪曲は初めて、という方がいらっしゃった、という理由で「浪曲シンデレラ」。確かにこれは親しみやすい。本日の収穫は「ボロ忠売り出す」で、実は奈々福さんで聴くのは初めてなのである。来てよかった、と思いましたよ。能天気なボロ忠がいい感じであった。

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