杉江松恋不善閑居 近鉄奈良・古本白利&古本や酒仙堂

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某月某日

大阪から日帰り奈良行の続き。

収穫の多かった古書柘榴ノ國を出てさらに東へ進む。奈良市内の古本屋と新刊書店はブックマップに掲載されているので、それを入手できると歩きやすい。これは古本屋えっちゃん堂が制作したものだったと記憶している。このときは柘榴ノ國でもらうことができた。

行き方で言えば、柘榴ノ國から南下して、ならまち大通りを東に進み、観光案内所の奈良情報館の手前で南に折れて下った道なりの右側ということになる。ただ、この路地が古い商家や観光客向けの店が並ぶ通りなので、そこに古本屋があるということを知らないと結構見逃すのではないかと思う。古本白利という置き看板が町屋の前に出ている。

格子戸を開けて中に入ると、土間が古本屋空間になっている。ホームページはなくてSNSのみ。それによると土日祝午後のみの営業のようだ。おそらく他のお仕事もされているのではないだろうか。置いてある本は文学書や児童書が中心で、文庫も結構数があった。その日に読む岩波文庫を何か一冊買った、という記憶がある。

そこからさらに南へ下る。このへんはならまちという、歴史の風情ある建物が並ぶ地域なので、歩いているだけで楽しい。御霊神社の前を過ぎたら次の角を左折して東に、行き当たった角に酒仙堂がある。

白利と同じく土日祝の午後だけやっている古本屋だ。二軒ともGoogleMapには載っていないのでブックマップがなかったら辿り着けなかった。えっちゃん堂もそうなのだが、奈良市内の古本屋にはニューカマーが多く、もともとあった町屋を借りて営業している。長く続けてもらいたいと思う。

酒仙堂は外見からして魅力的だった。白利はもともと何かの商いをしていたのだろうと思う作りだったが、こちらは明らかに普通の、平屋の民家である。家の前に置き看板が出ているので古本屋だとわかるのだが、それ以外に曇り硝子の窓に「古本や酒仙堂」と書かれた紙が貼ってある。そこに付された説明がおもしろい。「畳敷きのへんな本屋‼ 散策づかれに休憩‼‼」とあるのだ。

早速中に入ってみる。なるほど畳敷きだ。手前のゾーンは身の丈くらいの書棚が並べてあって、古めの小説本などが棚に詰め込んである。そのまま棚が奧へと続いているのだが、本丸と思われるそちらのゾーンにご主人はいらっしゃった。こちらは茶の間をそのまま古本屋にしたような作りである。書棚が壁際に置いてあるはあるのだが、それよりも手前に積まれたレコードや、おもちゃの方に目がいく。昭和のプラモデルも置いてあり、ロボダッチを見た瞬間、旅先ということも忘れて購入しそうになった。だって、ロボッ島なのだ。

ロボダッチシリーズは今井科学のヒット商品で、卵型のタマゴローを初めとするロボットたちのほか、彼らが暮らす「ロボッ島」という基地も大型商品として当時の子供たちには人気があった。その「ロボッ島」なのだ。熟慮の末買わずに帰ったのだが、ロボダッチは今井科学倒産後青島文化教材社が引き継いだはずなので、どちらの商品かは確かめてくればよかった。いや、今井科学版だとわかったら買っていただろうから、確かめなくてよかったのか。

それ以外にもいろいろおもしろい点があり、貼り紙には「煙草2本まで喫煙可」としてあった。古本屋が店内で喫煙を許可するというのは聞いたことがないが、この茶の間で灰皿を使うなら、ということなのだろう。地元の人が書いたブログを見ると、酒が出てくることもあったらしい。貼り紙通り、休憩所としても提供している場なのだ。民家をそのまま店舗に使っている古本屋は全国にいくつかあり、土浦の生存書房、静岡の書肆猫に縁側、大阪の古書ますく堂が思い浮かぶ。その中でも酒仙堂は飛び切り個性のある古本屋だ。ご主人が元気な限りずっと続けていってもらいたいと思う。

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