山形行の話が中途半端になっていたのでその続き。
山形に行ったのは、真山隼人・沢村さくらコンビの浪曲会が山辺町の噺館という会場で開かれるからだった。沢村さくらさんの出身地である山形を皮切りに、大阪、名古屋、東京と4都市で口演される浪曲「傾城反魂香」を聴くためである。
噺館の最寄り駅は左沢線の羽前山辺である。ちなみに左沢は「あてらざわ」と読む。知らないと絶対読めない。この左沢線は1時間に1本なので、乗り逃がすと大変なことになる。実はこの日、絶対に大阪まで辿り着かないといけなかったのだった。
「傾城反魂香」公演は16時ちょうどに終わった。そのまま飛び出して噺館から羽前山辺駅まで突進する。16時7分に山形駅行きの上りが発車するのになんとか間に合った。これを逃すと次は16時45分、それでも大阪入りはできるのだが、目的地に着くのが0時を過ぎてしまう。ホテルに連絡をしなければならないだけではなく、おそらくは夕飯を食いはぐれてしまう。16時7分に乗れれば23時には着けるのである。しかし列車の中で新幹線を予約しようとして驚いた。山形発東京行のつばさがほぼ満席なのである。ようやく見つかったのがグリーン車で、背に腹は代えられないと諦めて予約した。
山形駅着16時21分、つばさが出るまで40分あったから駅の近くで食事を、と思ったが時間が中途半端だからかどこも開いていない。一軒だけ見つけたラーメン屋に入ろうとしたが、今はやっていないと断られた。目の前でラーメンを食べている客がいるのにやっていないとは何事だ、と思ったが入れてくれないものは仕方ない。あそこは以降私の中で意地悪ラーメンと呼ぶことにする。駅前の一等地で営業していても意地悪だぞラーメン屋め。
17時5分山形駅を出発、18時48分に東京駅に着いた。ここから6分でのぞみに乗り換えなければいけない。東北新幹線から東海道新幹線への乗り換え改札を経て、ホームに文字通り駆け上がった。目の前に新幹線がいて、今にも発車しようとしている。やれやれ、間に合った。
と思って自分の席に行ってみると、なぜか人が座っている。もしもし、間違えてますよ、と声をかけようとしたとき、車内アナウンズが流れて来てその場で固まった。
これ、のぞみじゃなくて、こだまだ。
間違えたのは私の方である。慌てていたので、向かい側のホームから先に発車するこだまに乗ってしまったのだ。
うわ、やってしまった。しかしどうしようもない。このこだまは新大阪行きだし、確認してみたところ24時は過ぎてしまうがなんとかホテルのある駅まで行けるようである。一安心したが、羽前山辺でダッシュした苦労はなんだったのか、と溜息が出た。
仕方がないので座っていくか、と自由席車両に向かおうとして閃いた。こだまだから次は品川に停まる。後から来る、本来乗るはずだったのぞみも品川に停まる。品川駅の下りホームは一つしかない。
もしかすると後ろののぞみに乗り換えられるのではないだろうか。
とすれば呑気に座っている場合ではない。荷物をつかんで立ち上がった。近くにいた乗客は呆れただろうと思う。とぼとぼやって来て座席にくずおれたと思ったら、また血相を変えて立ち上がったのだから。慌ただしいことである。
品川駅で降りた。向かい側のホームを見ると、次に来るのがまさにそののぞみであることが判った。のぞみはまだあるぞ。こだまが発車して数分後、のぞみ到着。今度こそ本当に乗るべき列車である。きっぷに指定された席は空いていた。座る。やれやれ一安心。
教訓。のぞみは速いが品川までは前を走るこだまを追い越すことはできない。
新大阪には22時24分に着いた。動物園前駅のいつもの宿にチェックインし、近くのDで夕食を摂って寝た。
翌日は早起きして、大阪メトロ中央線のコスモスクエア駅へ。インテックス大阪で開かれる東方紅楼夢に参加するのである。どうしてもこの日までに大阪に入らなければならなかったのはこのためだった。一人参加で同人誌を販売した。心地よく疲れた後は、ホテルにまた戻り、荷物を置いて再び外出。なんばで天地書房と兎月屋書店を覗いたあと、谷町線で谷町九丁目駅へ向かう。高津神社で、広沢菊春・美舟の独演会が開かれるのである。
菊春はこの月が浪曲親友協会の一心寺門前浪曲寄席に初出演、土日月と顔付けされているはずだった。それに合わせてこの高津神社でも自分の会を2日間行っていた。なんとか1日は聴けてよかった。
翌月曜日の一心寺門前浪曲寄席にも顔を出すつもりだったが、新幹線の予約状況を見て考えが変わった。目の前でどんどん午後の新幹線が満席になっていく。実はその月曜日が大阪万博の最終日で、大阪中が観光客で溢れていたのである。席がないならもう一日大阪に、と普段なら思うところだがそうはいかない。月曜日の夜は東京にいて、朝日カルチャーセンターの講師をしなければならないからだ。
そんなわけで早々に諦めてチケットを予約し、宿に帰って寝た。
翌朝、起床したが浪曲に当てていた時間がぽっかり空いてしまった。仕方がないので近所で開かれている四天王寺秋の大古本祭りへ。本を買って帰った。山形に行っても古本を買い、大阪に行っても古本を買う。そういう生活。
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