杉江松恋不善閑居 旧聞 六甲・口笛文庫

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某月某日

10月大阪行の続き。

大阪に頻繁に行くようになって、府内の古本屋はだいぶ回ることができた。大阪市に限って言えば、足を踏み入れていない個人経営の店は一桁だと思う。となれば周辺府県にも行くべきであろうということで、京都府、奈良県の順番に少しずつ未踏の地をつぶしつつある。あとは、そうだな、兵庫県だ。

というわけで心斎橋のホテルで起きた後は梅田駅から阪急神戸線に乗り、西へ向かう。降りたのは六甲駅である。

神戸は坂の街だとは聞いていたが、なるほど駅自体が結構傾斜の強い坂の途中に引っかかったような形で在る。小雨のぱらつく中、その坂をJR神戸線の方へどんどん下っていった先に、ひょいと現れるのが口笛文庫だ。

表から覗ける店構えだけでも只者ではない風格を感じる。入って右側は絵本や児童書のコーナーか。それよりも目を惹くのは入ってすぐのところにある平台で、うず高く何かが詰まれている。入店してすぐにわかったのだが、これは戦前の出版物や刷り物であった。それが十近い山になっている。どんなお宝があるかわからない。たちまち逆上気味になって山の探索に取り掛かった。一つの山を上のほうから取り、さかさまにして低めの山の上に重ねる。見終わったら引っくり返して元の場所に戻すわけである。見ながらわかったが、海外の出版物や政治関連のパンフレットなどが多くて、私が捜している大衆芸能関連のものは少なく、映画系が少しかする程度だった。しかし見落としがないようにじっくりと探す。

山の探索が終わってから改めて店内を見回した。店は二つのエリアに分かれていて、少し段差がある左奥が文学ゾーン、手前は社会科学や人文科学、サブカルチャーのゾーンである。その中間、文学ゾーンに入ってすぐ右のところが帳場になっている。

文学ゾーンは先端の海外文学なども多いのだが、黒っぽい昭和の本などもあって油断ができない。中央に四面の棚があり、それを一周しながら壁面の棚を見ていく。

手前のゾーンはいくらでも買える本があって悩むところだ。思想・哲学系の棚の充実度は感嘆させられるほどで、近くに神戸大学があるということも影響しているのだろうか。入口から見て正面奧がサブカルチャー棚で、ドーナツ盤レコードなども積まれている。ここはちょっと齧ってみました、という程度ではなく、学習雑誌の付録なども置く程度の、つまりかなり深度のある棚造りになっている。よそでは結構なプレミア価がついている本も結構良心的な値付けになっていた。回転が速い店なのだろうと感じられる。

結局、久住昌之の珍しい風俗探訪本、といっても探訪するのは久住自身ではない別の人物なのだがの『ある純情青年の風俗十番勝負』(はまの出版)と全関東河内音頭振興隊編『日本一あぶない音楽 河内音頭の世界』(宝島社)を購入した。後者はダブりだと思っていたので人にあげる用にしようと思っていたのだが、新装版で家にあるものと表紙が違うことが判明したので、めでたく拙宅の棚へ。

素晴らしい実力の店だと唸りつつ口笛文庫を後にした。後日判明したのだが、JR神戸線の向こう側には文庫六甲という店もあるのだとか。しかし営業時間が午後からで短いので、この日はどちらにしろ探訪不可能だっただろう。六甲はまた行かなければいけない。

というわけで続く。

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