杉江松恋不善閑居 旧聞 西宮北口・2階洞書店

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某月某日

兵庫行の続き。

今津にて滋味の深い古書肆・蝸牛にて発掘作業を行い、無事に成果を上げた後のことである。すでに日はとっぷりと暮れ、さすがに冷えてもきた。当夜の泊まりは大阪・西成なので、帰途につかなければならない。そこで駅まで戻り、阪急今津線に乗ったのである。

ここで来た道を辿って阪神本線で帰ればいいのでは、と思った諸氏は正しいが、古本好きの心理を理解しているとは言えぬ。まだ夜になったばかりなのだから、もう一軒回れるところがあれば回ろうと考えるのが人情ではないか。

阪急今津線は宝塚~今津間を結ぶ、10kmにも満たない路線だ。中間の西宮北口を境に今津北線、今津南線に分かれる。今津南線に属するのは西宮北口と今津駅のみで、駅間はわずか700mだという。一度この小さな区間に乗ってみたかった。今津駅から西宮北口はもう見えていて、あっという間に着いてしまう。

この西宮北口駅前にACTAという商業施設のビルがある。複数の棟があるが、私が用があるのは駅から離れた東館のほうだ。ペディストリアンを通って東館に行き、二階からエスカレーターで一階に下りる。見える風景はスーパーマーケットの食品売り場以外の何物でもないが、気にせず間借りの店舗が並んでいるほうに向かって歩いていく。どう見ても古本屋などありそうにないのだが、ずんずん進んでいった先に2階洞古書店がある。紛らわしい名前だが一階にある。おそらく店主が二階堂というお名前なのではないだろうか。

通路の曲がり角にあり、一面のうち長いほうは均一棚になっている。正式な入口はたぶん通路に面したほうの短い側だろう。入口には絵本やグラフ誌などが詰まれている。真ん中の棚で二分された通路は決して広くはないが、棚の密度が高い。入口から見て左が主にコミックと児童書、小説や趣味の本は右側に収められている。整然とジャンル分けされているわけではないが、なんとなくのまとまりはあり、昭和~平成期のサブカルチャー本に目を惹くものがあった。

文庫を一冊買ってお会計していただく。店主と思しき人物は女性で、店に来ていた高校生ぐらいの少年と何やら話をしていた。ご子息か親戚の子か、それとも店の常連だろうか。そう想像したのは、駄菓子屋のように近所のこどもたちがお小遣いを持って遊びに来れそうな店構えだったからだ。ここは地元の人々のための古本屋なのだな、と納得して店を出る。

駅に戻って阪急西宮北口駅。もうさすがに帰る。

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