杉江松恋不善閑居 肥後琵琶と浪曲のひるさがり

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某月某日

すでに旧聞に属することになってしまったが、先々週16日は熊本より肥後琵琶奏者の岩下小太郎が来京し、東家三可子との初共演を果たしたのであった。会場など予約の都合上、平日金曜日の昼間開催となったが、十人を超えるお客さんがいらしてくれて、盛況となった。

演目は以下の通り。

甚五郎、龍を見た 東家三可子・玉川鈴

肥後琵琶 荒神払い・梅は匂ひで 岩下小太郎

中入

今井雅子原作「膝枕」肥後琵琶版 岩下小太郎

今井雅子原作「膝枕」浪曲版(北角文月脚本) 東家三可子・玉川鈴

「荒神払い」とは竈払いのことで、火伏の祈りをするときに口演される。肥後琵琶は門付芸の性格を持っているが、宗教者として新築などさまざまなときに呼ばれて祈禱を行う宗教者でもあるのだ。もっとも、宗教者として僧籍を持っていた肥後琵琶奏者は鬼籍に入っており、現在いる人は純粋な演奏者である。「梅は匂ひで」は、そうした宗教者の肥後琵琶者が演奏の後で行われる宴会などで弾く余興である。そうした場では説経節や浪曲などから題材をとった語り物が演じられることもあった。いっぱんに演奏されるのはそうした娯楽性の高い曲目なので、「荒神払」や「ワタマシ」など宗教色の強いものが聴けるのは貴重な機会なのである。

後半は今井雅子原作「膝枕」を競演していただいた。最初は、前半を肥後琵琶で後半を浪曲とも考えていたのだが、それぞれフルバージョンでの口演となった。聴き比べもできて、お客さんには満足していただけたのではないかと思う。

年内にもう一度肥後琵琶公演を行う予定がある。今度はぜひ、岩下小太郎の師匠である後藤昭子にもご来京いただきたい。いいんですよ、後藤さんは。

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