木曜日。
午前中に切羽詰まった原稿を3本送り、その後も夕方ぎりぎりまで仕事をして家を出る。アートスペース兜座で立川寸志さんの「寸志トリ噺五十席」である。この日の予告は初夏らしく「青菜」と「景清」であった。青菜は大人の旦那が難しいと思うのだが、寸志さん頑張ったと思う。これを貫禄たっぷりにやるのは年季がいるだろう。あと10年したらいい感じ、といっても寸志さんもいい歳になるが。「景清」は突然の眼疾で失明した男の本音を引き出して人間臭い演出だった。心に訴えかけるものがあってよかったと思う。次回は6月3日。
実はこの日、前日に投票期間が終わった本格ミステリ大賞の事務局から、落選の報が届いていたのであった。以前は封書での投票で開封のセレモニーがあったが、現在はネット上のフォームが使われているので即日で結果がわかる。
『日本の犯罪小説』という題名だし、本格ミステリ大賞には若干のカテゴリーエラーではないかとも思うので、さほどがっかりはしなかった。何より受賞したのが新保博久・法月綸太郎『死体置場で待ち合わせ』なので、納得の結果である。今回の候補作のうち、『日本の犯罪小説』と千街晶之『ミステリで読む「二〇二〇年」』、そして本作は光文社『ジャーロ』の連載から生まれた本だ。ミステリー評論を賦活する試みとしてぜひご注目いただきたい。評論はまだまだ捨てたもんじゃないんですよ。