杉江松恋不善閑居 南森町・駄楽屋書房&日本橋・絶版漫画バナナクレープ

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某月某日

京阪行の三日目である。この日の午後に新幹線を予約していたが、ちょっとだけ時間が空いていた。まだどこか未訪の地に、と考えて思いついた。阪急線十三駅に渡辺金文堂書店がある。これまで何べんか訪問を試みたのだが、まだ中に入れていない。北ということで新大阪駅に近いし、ちょうどいいのではあるまいか。

泊まっていたのはいつもの動物園前なので、御堂筋線で北上する。梅田で阪急線に乗り換えて十三駅へ。駅からだいたい1㎞くらいの、商店街の外れに渡辺金文堂はあるので、とことこと歩いていく。このあたりは鄙びたいい雰囲気なのだが、高齢のためか長年営業していた店を閉めます、という貼り紙があちこちにあるのが気になった。10分ほどで着く。

開いていない。

歴史がかった摺りガラスの戸が閉まっていて、中に本の包みが積まれているのがぼんやりと見えるのだが、戸は開かない。休みのようにも見えるが、しばらく営業していないのかもしれない、と思わせるた雰囲気だった。仕方ない、また来よう。

阪急線で梅田に戻る。そこからウメチカを歩いて東梅田駅へ。谷町線で南森町まで。天神橋筋は、北の環状線天満駅から続く大阪最大の商店街である。そこに未訪店のフォルモサ書院があるのだ。何度も挑戦して裏切られているが、今日こそは、と意を固めて歩いていく。途中で駄楽屋書房の前を通りかかった。以前は一階に店舗を出していたが、今はそこは期間貸しをしており、古本屋自体は三階に移った。移転してからは訪問していないので、階段を上って見に行く。雑本や雑誌から硬い本までがゆるやかなグラデーションで並ぶ店内は一階のときとあまり変わらなかった。演芸本コーナーで西川のりおの持っていなかった新書、『大きなお世話だ』を買う。300円でべらぼうに安かった。嬉しい。さあ、これで次はフォルモサ書院だ。

開いていない。

フォルモサ書房はビルの二階にある。営業していれば看板が前に出ているはずなのだが、引っ込められていた。見るからにやっていない。しかし諦めきれず、二階まで上がってみることにした。店の前に営業日の貼り紙があって、どうやら日曜日や祝日は基本的に開いていないようだった。ここと日本橋の文庫櫂にこれまで何度も振られている。宿題店だから、いつか必ず来なければならない。残念だが仕切り直しである。

天神橋筋には複数の古本屋がまだある。それを見て終わりにするか、それとももう一発狙うか。ふと気が付いた。瓦屋町の絶版漫画バナナクレープにはもう1年以上行ってないのではないか。しかし休日は午後2時開店だったはず。新幹線の時間を考えるとぎりぎりなのだ。一計を案じ、ツイッターで「バナナクレープは今日やっているだろうか」と書いてみた。店主がいらっしゃったら、必ず見てくれるはずだ。しばし待つべく別の店に。天牛書店と矢野書房は定番だから必ず寄る。後者で、読もうと思っていたジッド『贋金づくり』(岩波文庫)を上下巻500円で拾った。よし、これで目的を達成したようなものだが、まだ時間はある

ツイッターを見たらバナナクレープのご主人から返事が来ていた。調子がいいので1時半からもう店を開けているとのこと。急いでタクシーを捕まえ、瓦屋町へ急行した。ビルの四階にある店で、結構急な階段を上っていかなければならない。えっちらおっちら上っていくと、店主に出迎えられた。

ここに来るといつも30分から1時間近く話し込んでしまうのだが、残念ながら今日は時間がない。最近の探求書はカゴ直利です、という話をしながら手早く棚を見ていく。漫画は残念ながら発見がなかったのだが、ノヴェライズの棚でイヤーン・フランミンゴ『スリップ作戦開始』を発見した。007シリーズを意識したパロディ、ピンク07号シリーズの一冊で、清水正二郎訳とあるが嘘、本人の作である。作品の一部は胡桃沢耕史名義で文庫にもなっている。値段は少し高かったがこれは買うしかないだろう。勘定を済ませ、途中で道を間違えたりしつつも無事に新大阪駅へ到着。乗るはずだったのぞみに間に合った。

これにて京阪行終了。次に来るのは来年になるだろう。またね、京都・大阪。

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