杉江松恋不善閑居 翻訳ミステリー大賞これにて大団円

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某月某日

ずっと抱えていた下読み仕事は前日が〆切だったのだが、コメント書きがこぼれてしまい、申し訳なく思いつつ午前中にてそれも終了。

新宿までやってくると、サブナードで恒例の古本新宿浪漫洲が始まっている。ここは相性が悪くてこのところあまり何も拾えていない。ちくま文庫だけで一列、講談社学術文庫で一列という魅力的な棚があったが、残念ながら必要なものはなし。それにしてもちくま文庫と講談社学術文庫だけで一列はすごい。一段ではなくて縦に一列だ。

新宿に来たのは紀伊國屋書店を覗くためである。翌週月曜日〆切の「好書好日」で取り上げる本が決めきれていないのである。紀伊國屋書店は最近、今風の感じに新刊コーナーをいじって本が探しにくくなった。書店員のおすすめを大きく展開するのはいいのだが、新刊とそれは厳密に分けてもらったほうがいい。いちばん目につく場所の平台はやはり今月の新刊にしてもらいたいのである。混ざるとよくわからないんだよな、とぶつぶつ言いながら探すも新しい発見はなく、結局最初の候補にする、と担当アライユキコさんに連絡をする。帰宅して配信の準備に入る。

翻訳ミステリー大賞が第15回を迎え、終了することになった。この賞は完全な手弁当で、事務局はボランティアで携わっている。15年続けて、元気なうちに笑って終わろうというのが主な理由である。歴史的役割は十分に果たしたとも思う。いろいろなことがあったし、中には辛い出来事や不快なこともあったが、楽しい思い出のほうが多かった。最初の開票・贈賞式は本郷の鳳明館別館で、泊りがけでやった。古風でいい旅館であり、私が初めての全日本大学ミステリ連合大会に参加したときの会場でもあった。今はどうなっているだろうか。宿泊してのイベントが難しくなってからは、蒲田の大田区産業プラザPioでやっていた時期もあった。あれは申し込みをしなければならないので、最初のときは某編集氏と白石朗さんと三人で行ったな。蒲田ではしばらく続いた。

そういえば、スウェーデン大使館から声をかけていただき、ノーベルホールを使わせてもらったことも一度だけあった。国際情勢がまだ平和な時期だったので、セキュリティも緩かったのだが、今はどうなのだろうか。ロシアのウクライナ侵攻もあって、スウェーデン大使館もセキュリティ・レヴェルを上げたと聞いている。機会があれば、あそこでもまた何かやってみたいものである。

現在のような配信形式になったのは、2020年に新型コロナウィルス流行が始まったからである。実は最初、下北沢の本屋B&Bで少人数開催して配信、という案もあった。だが、何かあったときに責任が取り切れないということで意見がまとまらず、結局私が読み上げをするという形で収まった。あれからずっと配信のままで、集まってのコンベンションを懐かしんでくださる声もあったのだが、対応には踏み切れなかった。蛮勇を振るえる若さが、もう事務局には残っていないのだと痛感した次第である。

始まったときは、当たり前だがみんな15歳若かった。当たり前だが15歳、年を取った。それだけ分別もつくし、社会的地位も上がった。他では結構な看板になっている翻訳者のみなさんに手弁当での仕事をお願いするのが申し訳なくなった次第である。途中で事務局から抜けた方も含めて、これまでのご尽力に厚く御礼を申し上げたい。支えてくださった翻訳ミステリーファンの皆様にも、もちろん。

というような思いが胸に去来することもなく、粛々と第15回の開票読み上げは始まり、終わった。結果はク・ビョンモ/小山内園子訳『破果』(岩波書店)が受賞作に決まった。最後に初めて韓国ミステリーである。なんだか新しいことが始まるようで、めでたい。配信の終わりに事務局を代表する形で何か言わなければならないので、簡潔ではあるが上に書いたようなことを挨拶として話した。これにて15年間の歴史に幕。ただ、サイトは存続するので、事務局内で相談をして今後についての発表をする予定である。まだちょっとだけ続くんじゃよ。

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