杉江松恋不善閑居 旭堂南陵一門会inお江戸日本橋亭

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某月某日

今抱えている仕事。レギュラー原稿×7。イレギュラー原稿×1(解説)。

やらなければならないこと。主催する会の準備×1。

午後いっぱいまで仕事をして夕刻から三越前のお江戸日本橋亭へ。大阪講談協会の旭堂南陵一門会である。まったく予備知識がなく、当日になってツイッターで旭堂南明さんに連絡して予約をお願いした。行ってみて驚いたが、ほぼ満席状態である。演者の談話によれば、南陵一門会の東都初お目見えということで、地元の大阪からもファンが応援に駆けつけたらしい。それにしても盛況だ。

木津の勘助嫁取りの巻 旭堂南慶

安倍晴明伝 旭堂南鈴

男の花道 旭堂南照

仲入り

那須余一 旭堂南明

甚五郎の千人坊主 旭堂みなみ

てっきりトリを務めると思っていた、年季ではいちばん上の南慶さんが開口一番に上がられたので驚いた。本人曰く、「洗濯物を干しっぱなしにしてきたので取り込まな」。そうか、それなら仕方ない。「木津の勘助」は先日神田春陽さんで聴いたばかりだが、ほぼ同じ形。というか春陽さんが教わったのだろうが、上方のどなたからなのだろうか。悠揚迫らぬ態度の語り口で安心して聴ける。高座の後でこの日の縁者が皆出てきて紹介された。会場で写真をばしばし撮っている人が多くて驚いたが、許可が出ていたのだろうか。南慶さんがこの日帰られるので逆取りのような形なのだと知る。

続いて南鈴さん。南慶さんが「またの名をメーテル」と紹介していたのでなんだろうと思ったが、後で調べたら「ガチ鉄選手権」でコスプレ出演されていたのだとか。なにしろ予備知識がまったくないもので。神道講談は上方独自のものなので興味深く聴く。晴明が蘆屋道満をなじる言い立てが小気味よく決まっていた。そして南照さんの「男の花道」。これも浪曲などではおなじみの外題だが、冒頭に宿屋のいい加減さをいじるギャグがあるのが上方らしい。南照さんは日舞のような所作を交えながら読む。

仲入り後は南明さん「那須余一」。射手を亡き者にしようとする企みなど、脇筋が入ってたっぷり目の演出であった。平安ものは言葉も格調高く、とおっしゃっていたのは人間国宝・神田松鯉であったが、こちらはやや砕けた印象である。流派によっていろいろ違う。トリはみなみさんで「千人坊主」。これも幸枝若の浪曲などで馴染みのある外題だ。というか浪曲が講談から貰っているのだろうけど。大団円までちゃんと聞かせてお開きに。

なにしろ上方講談をきちんと聴いてこなかったので完全に俄かの言であるが、全般的に聴きやすい講談だったというのが感想だ。この一門ならこの人、というのがまだ見えてこなかったので、引き続き機会を捕まえて聴いていきたいと思う。大阪講談協会では先日聞いた旭堂南龍に感心したので、同じように興味を持てる講談師をもっと見つけたい。南龍と此花千鳥亭を運営しているフリーの五代目旭堂小南陵はどういう芸なのだろうか。また、なみはや講談協会もちゃんと聞かなければならない。旭堂南海がいいという評判なのだが、まだ生では聴いたことがないのである。あとはフリーになった玉田玉秀斎か。

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