杉江松恋不善閑居 旧聞・出町柳「古書善行堂」・「竹岡書店」

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某月某日

今抱えている仕事。レギュラー原稿×5。イレギュラー原稿×2(エッセイ、解説)、ProjectTY書き下ろし。

やらなければならないこと。主催する会の準備×1。

金曜日から日曜日にかけて伊勢参りに行ってきた。妻もこどもも行ったことがなかったので、初めてのお伊勢さん。私は遷宮以来だから九年ぶりだ。その話はまた後日に。

週の初めなので仕事の予定を見直してみた。ゴールデンウィーク中ではあるが、レギュラーのものは〆切がくる。淡々とこなしていく。

5月8日に博麗神社例大祭が開催されるので、会場に既刊を送った。ついでに棚卸も済ませる。とらのあなから戻ってきたタイトルが三つあるので、一気に自宅在庫が増えた。

また昨年の京都の話。そろそろ終りにしなくては。吉岡書店と井上書店を訪ねたあと、さらに今出川通りを東に進んでいった。だんだん上り坂になり、洛東の端に到達しつつあることを意識する。通りの様子がだいぶ落ち着いた感じになったところで、道の右側に古書善行堂が姿を現した。古本マニアで知られる山本善行氏が、趣味が昂じて開いたお店である。今回の京都行におけるいちばんの目的地でもあった。店頭の均一棚からして、ここは何かをやる気の店なのだな、という意欲を感じさせる。中に入ると鰻の寝床のような長い店内が、間仕切りのような棚で仕切られている。文学書を中心に濃い選書で、間仕切りの棚には絶版文庫の興味深いものが並ぶ。どれも買おうと思えば買える本なのだが、今回はひとつお目当てがあった。宮内書房刊の『岡田睦作品集』である。

岡田睦は芥川賞候補になったこともある私小説作家だが、不遇の人生を送り、最後には行方不明となった。講談社文芸文庫から『明日なき身』が出ているが、それ以外の本は入手困難であった。その岡田の単行本未収録作品を、『明日なき身』以降のものも含めて収めた短篇集である。宮内書房は元善行堂の常連だった方が始めた小出版社で、現在は通信販売を主としてこの本を頒布している。どうしても読みたくなり、大阪行きをいいことに京都にも立ち寄ることにしたのだ。善行堂で『岡田睦作品集』を買うというのがいいではないか。

山本善行氏の著書『古本泣き笑い日記』もあったので、それも一緒に帳場に持っていく。岡田睦の話などを少しして、店を出た。よし、これで目標達成。

善行堂の隣はgorey cafeというお店だが、古書部として本も売っている。あいにくとこのときは営業時間ではなかった。山本氏もこのお店でトークイベントに出席されることがあるという。その隣にはもう一軒、竹岡書店という古本屋があった。美術書を中心に雑本も取り扱うというお店で、入ったときは主らしい女性がなにやら事務処理の件で電話をしておられた。棚の感じに見覚えがある。たぶんはるか以前に立ち寄ったことがあるのだろう。自動ドアが壊れていて、手動になっていた。外に出て、冷たい空気の中で深呼吸する。

クリックすると販売ページに飛びます。

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