杉江松恋不善閑居 若手一文字浪曲会inばばん場、早稲田「江原書店」「丸三文庫」

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某月某日

今抱えている仕事。レギュラー原稿×4。イレギュラー原稿×3(エッセイ×2、評論)、ProjectTY書き下ろし、ProjectTH書き下ろし。

やらなければならないこと。主催する会の準備×1。

午前中に通院の用事があり、午後にレギュラー原稿を1本だけ仕上げる。夕刻に外出、早稲田まで行って歩くも、風雨が激しくなって閉口した。店もほとんど開いていない。骨折り損のくたびれ儲けになるかと思ったが、閉まりかけの江原書店で水上勉『決潰』(角川文庫)を拾う。続いて丸三文庫で古い映画館のチラシにいくつか浪曲実演のものが含まれているのを発見、安かったので四枚ありがたく買う。そこから歩いて十分程度、高田馬場ばばん場が目的地である。

港家小そめと富士綾那が主宰する若手一文字浪曲会は、毎回客席から漢字一文字のお題をもらって演目を決めてくるという試みである。今回は「涙」。

相寄る心 富士綾那・沢村博喜

深川裸祭り 港家小そめ・沢村博喜

トーク

子別れ峠(房前智光作) 国本はる乃・沢村博喜

出演は年季の若い順、といってもこの三人は入門がそんなに離れていないが、国本はる乃だけは小学生から国本晴美に教わっていた少女浪曲師上がりだから話が違う。「相寄る心」は酒乱の男の改心を妻子の視点から描いた大正期のお話。綾那は舞台俳優でもあって度胸があり、浪曲に対して冷静さを保てる距離をとっているところもあって、こうした泣かせの話では入れ込みすぎない演出をしているように見えておもしろい。この日も冷静な分節回しだけで魅せようとおおいに頑張った。小そめは声量があるほうではないのだが、この日の「深川裸祭り」では自分の弱点をカバーする工夫が随所にあって良かったように思う。はる乃はさすがの貫禄で、外題付けから前の二人とはやはり違う。啖呵もピシッピシッと決まって実にいい舞台だった。豪雨の中を押してくる価値のあった会である。

次回のお題は「笑」と決まった。日程は未定だが6月に開催される。

若林踏さんと毎月お届けしている国内ミステリー書評番組「ミステリちゃん」2022年4月号を現在公開中です。本日その2が公開されました。

立川寸志さんが落語についてあれこれ語るnote「寸志・松恋の百席余談」も更新されました。最新回はこちら。次回「寸志滑稽噺百席」は4月21日(木)開催です。

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