杉江松恋不善閑居 旧聞・河原町「三密堂書店」

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某月某日

今抱えている仕事。レギュラー原稿×5。イレギュラー原稿×3(エッセイ、評論、解説)、ProjectTY書き下ろし。

やらなければならないこと。主催する会の準備×1。

レギュラー原稿を一本上の勘定に入れ忘れていた。けっこうぎりぎりなので早く書かないとまずい。一日在宅して解説原稿と格闘し、あれやこれや悩む。打破できる箇所が見つかったら一気に書ける感じなのだが、槌を当てるための場所が見つからない。ひとまず書き始めたら、文章を重ねる段階のところで迷ってしまって時間切れになった。夜にリモートで重要な会議。けっこうな人数が集まって討議を行う。先は長い。

昨年末の関西行、続き。大阪で二泊した後、早朝から起きて京都へ向かった。通勤・通学の人で込み合う車内ではずっと芦辺拓『大鞠家殺人事件』を読む。船場のことを書いた小説なので、そのへんを電車が通過していくのがおもしろい。おもしろいのだが寒いのには参った。いや、コロナ感染防止で窓開けをしているのだから仕方ないのである。

河原町で下車。どこか適当な喫茶店で時間を潰そうと捜したが見つからず、仕方なくスターバックスで『大鞠家殺人事件』の続きを読む。不思議な小人が出てきて踊るので驚いた。なんだろうこれは。どんどんおもしろくなっていく。たぶん芦辺さんのベストだ。

10時近くなったので店を出てひとまず南へ向かう。ここに二軒並んだ三密堂書店と吉村大観堂を最初に訪ね、鴨川を渡って洛東へ、という算段である。途中「天野屋利兵衛は男でござる」と大きく書かれた石碑を見る。義士外伝「男一匹天野屋利兵衛」で知られる豪商の墓所がこの聖光寺にあるという。そこを通り過ぎて下った先、道の左側に見えてくるのが三密堂書店だ。

三密堂とは変わった名前だが、コロナ対策、のはずはなく確か仏教用語か何かから採られたと記憶する。外に文庫棚、中に入るとまず中央に置かれた均一棚が目に入る。左右の壁は文庫から始まり、右側は仏教・宗教書、左側は古い探偵小説なども配置しながら文学・人文科学書が中心で、奥のほうには風俗関連の珍しいものもある。均一棚は何面かあって、左側の棚には単行本がかなりの値頃な価格で置かれていた。これは掘り甲斐がある。伊吹隼人『「トキワ荘」無頼派 漫画家・森安なおや伝』を発見し、購入。お店の目録もついでにいただく。

初っ端からいい収穫である。吉村大観堂は残念ながら開いていなかった。先は長い。どんどん歩くぞ。

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