翻訳ミステリーマストリード補遺(28/100) ヘンリイ・スレッサー『うまい犯罪、しゃれた殺人』

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翻訳ミステリー大賞シンジケートの人気企画「必読!ミステリー塾」が最終コーナーを回ったのを記念して、勧進元である杉江松恋の「ひとこと」をこちらにも再掲する。興味を持っていただけたら、ぜひ「必読!ミステリー塾」の畠山志津佳・加藤篁両氏の読解もお試しあれ。

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かつて、ミステリー初心者がフレドリック・ブラウンを知って短編ミステリーの扉を叩き、最初に入室した部屋でヘンリイ・スレッサーに出会ってその軽妙な味の虜になる、という幸せなコースがありました。スレッサーの部屋は人によって千差万別で、ロバート・L・フィッシュのホームズ・パスティーシュやシニカルな殺人コメディが最初だったよ、とか、ロバート・ブロックの恐怖で味を占めたよ、とか、レイ・ブラッドベリの叙情がたまらなかった、とか、まあ、いろいろあったわけです。最近だとそこに、エドワード・D・ホックが入るのかな。専門誌の短編掲載数が滅法少なくなり、切れのいい短編によって翻訳ミステリーのおもしろさを知った、という声もあまり聞かなくなったように思います。そういう方のために1冊、スレッサーを入れておきたかったのでした。

スレッサーで短編ミステリーの楽しさを知った方は上記に名前の挙がっている作家の他、故・小鷹信光が晩年作品の掘り起こしに力を入れていたジャック・リッチー、最近になってまた新訳刊行が進んでいるO・ヘンリーなどにも手を出してみると楽しいと思います。またヒッチコックがスレッサーの能力を引き出したように、ホラーのジャンルでは「トワイライト・ゾーン」制作者であるロッド・サーリングが恐怖小説作家を集める役割をしていました。文春文庫から『ミステリーゾーン』のタイトルで刊行されているアンソロジーにその原作の一部が収録されているので、こちらもどうぞご覧になってみてください。

さて、次回はロス・マクドナルド『ウィチャリー家の女』ですね。楽しみに

『うまい犯罪、しゃれた殺人』を畠山・加藤両氏はこう読んだ。

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