翻訳ミステリーマストリード補遺(27/100) アリステア・マクリーン『ナヴァロンの要塞』

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翻訳ミステリー大賞シンジケートの人気企画「必読!ミステリー塾」が最終コーナーを回ったのを記念して、勧進元である杉江松恋の「ひとこと」をこちらにも再掲する。興味を持っていただけたら、ぜひ「必読!ミステリー塾」の畠山志津佳・加藤篁両氏の読解もお試しあれ。

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『マストリード』の100冊を決めるにあたって困ったことの一つとして、冒険小説の里程標的名作がことごとく品切れになっている現実がありました。それこそ、ふたむかし前であれば必読の名著と言われたような作品が手に入らない。選んでは外し、選んでは外しの繰り返しでいくつもの作品が消えていったことを愚痴として記しておきます。そういう時代もあったね、と将来は笑い話になるといいのですが。

そうした中でさすがに代表作が現役として残っていたのがアリステア・マクリーンでした。『女王陛下のユリシーズ号』の格調の高さを取るか、『ナヴァロンの要塞』の興奮を取るか、と考えて後者に決めましたが、このへんは完全に好みでしょう。マクリーンに関しては初期作品から読み始めれば、まず外れを掴まされることはないはずです。お二人の話にも出てきましたが、ある使命を帯びて男たちのグループが決死行に乗り出す、というプロットに謎の要素を加えたのはマクリーンの功績だと思います。体力勝負だけではなく、知力も尽くしての闘いとなり、物語の幅が大きく広がりました。冒険小説というジャンルにあまり慣れていない読者にもお薦めできる所以でもあります。

『ナヴァロンの要塞』を畠山・加藤両氏はこう読んだ。

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