杉江松恋不善閑居 自粛生活17日目「本のページを折りますか」

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無観客の香音里で「武助馬」を演じる立川寸志さん。

4月24日

本に関するアンケート、趣向を変えて読書習慣に関することをお聞きしている。昨日のお題は「本のページを折りますか」であった。投票数は281である。

「本のページを折る」6.4%

「文庫など、保存を考えていない場合のみ折る」8.4%

「折るが、読後元に戻す」3.2%

「本のページを折らない」82.2%

これまででいちばんの偏り方であった。そうか、みなさん今は本のページを折らないのか。折らない理由として「本を綺麗に読みたい」「本に対する罪悪感がある」という趣旨のお答が非常に多かった。「ええっ、本を折る。なんてことをするんですか」という悲鳴を大量に聞いたような気さえする。すいませんすいません。

uniqueさん「本を綺麗なままに保ちたいのでドックイヤーなんて絶対にNGです。読む時も90度以上には開かないように頑張っていますし、なるべく外に本を持って出ないようにしています。持って出る時はこのように…(画像参照)大概、お弁当? って訊かれます。w #honyakmonskyviola」のように徹底して本を大事にされる方もいらっしゃった。どちらかというと本を乱雑に扱うたちの私などは頭を垂れるばかりである。

また、viola月の光さん「今は自分の本だけれど、僕が死んだりした後、他の人の手元に行った時に、なるべく綺麗な状態でいて欲しいから、ページは折りません」というご回答にはなるほど、と納得したのである。その感覚は私にもある。できるだけ綺麗な状態で渡っていってもらいたい、という。

少数派であるが「仕事の資料の場合は折ることもある」というご意見もあった。これはたぶん8.4%に含まれているのだろう。「読む」ときは折らない、「使う」なら折る、ということか。

Y田N子さん「仕事で読む本は必ず折ります。個人的な趣味で読む本は折りません。折るのは、ページの下の角で、折る角度と大きさは揃えています」

出渕平吉さん「仕事の資料として本に目を通す際は書物を道具として扱うため、ページは折るわラインは引きまくるわです。読書のための読書ではまったく折りません。だから、このアンケート回答としては折らないに1票でしょうか」

けいりんさん「2番につけましたが、保存を考えているかどうかというより、その本の自分にとっての意味によるという感じです。教科書や資料として買ったものは頻繁に折ります。付箋がわりですね」

私も折らない派である。だいたいみなさんと同じような感覚なのだけど、本が膨らむので困る、ということもある。わずかだけど、その分厚くなるし。だからきっちりと棚に収めることを考えると折らない一択なのだ。

しかし昔の人はよく本を折っていたように思う。古本屋で買った本もよくページが折れている。もしかするとそれは使いやすいポストイットがなかったためなのではないか。ポストイット普及と本のページを折る人の数の相対関係を調べた統計とかないだろうか。昔の『本の雑誌』とかでやってないかな。

手元にある本でいちばん最後に自分でページを折ったことがわかっているのは、ハヤカワ・ミステリ文庫版の『アガサ・クリスティー自伝』である。なぜ折ったのかはわからない。もしかすると、ポストイットがない状態で読んでいたのかもしれない。先日『ハーリー・クィンの事件簿』解説を書くために本棚から取り出してきて、ページが折れていたので、おっ、と驚いた。そういう時代が自分にもあったんだなあ。

自粛生活17日目。

昨日は、落語立川流の二ツ目、立川寸志さんの落語会が本来予定されていた。「寸志滑稽噺百席」といって、滑稽噺ばかりで百席積み上げていくという壮大な企画である。壮大だがもう19回やっていて、57席溜まった。記念すべき20回目だったが、このコロナ禍でやむなく中止にしたのである。

万が一お客さんが来たらいけないということもあるのだが、寸志さんと相談して、20回目は無観客で収録だけしようということになった。ネタ下ろし予定だった「武助馬」を演じていただき、それを私が撮影したのである。また、せっかくの機会だからということで、寸志さんに10の質問に答えてもらった。過去に演じて人気のあった二題と共に、後日DVDとして販売予定である。楽しみにしていてください。

収録終了後、いつもであったら神楽坂の居酒屋で打ち上げなのだが、どこも店がやっていない。行きつけの店も含めて、すべて閉まっている。まだ午後9時だというのに、人通りもほとんどない。それを見ているうちに寸志さんが変なことを言い出した。

「いちおう〇〇(行きつけの店の名前)、行ってみますか」

「行ってみましょう」

行ってみたが、当然ながら休みである。貼り紙がしてあり5月6日まで臨時休業するとしてある。

「やってませんね」

「やってないですね」

「でももしかすると、鍵をかけて中でこっそり営業していたりして。合言葉を言わないと入れてくれない、みたいな」

「合言葉を間違えると用心棒に叩きだされる」

「禁酒法時代のもぐり酒場ですね」

もちろん馬鹿な真似はしないでおとなしく帰宅した。早く落語会のあとで打ち上げに行けるような世の中が来ますように。

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