杉江松恋不善閑居 自粛生活8日目「本を誰かに贈ったことはありますか」

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こんな連載を始めました。画像はKADOKAWA文芸ウエブマガジン「カドブン」からの借用。

4月15日

このところ続けている本に関するアンケート、昨日聞いたのは、仕事以外の理由で他人に本を贈ったことがあるか、というものだった。

「贈ったことがある(布教のため)」26.6%

「贈ったことがある(何らかの記念日で)」50.6%

「贈ったことがある(退屈しのぎの道具として)」8.2%

「贈ったことはない」14.6%

最終投票数は267だった。私が人に本を差し上げた例は、ほとんど布教、つまりその本や作者の良さを他の人にも知ってもらいたい、という理由だったように思う。それをしたことが多いのはたぶん、私が大学のミステリー研究会出身だからだ。年下の人にこれを読んでもらいたい、ということで渡すのがほとんどなのである。押し付け、であるかもしれない。

アンケートのコメントでいくつか書いていただいたが、本には好みというものがあるので、贈るのが難しいかもしれない。

Tedさん「異動する上司に贈りました。ただ好みもあるので、本を贈るというのは、贈る側の自己満足かなという気もしなくはなかったです。が、自分が贈られる側なら、知らない本だったら偶然の本との出会いは楽しいと思います」

theJasminumさん「送別会で「君が前に話してたあの本、良さそうだと思ったので正確な書名教えて」と言われて、近くの本屋の在庫を検索して一瞬中座して買ってきてその場で贈ったことがあります。本を贈るのってすごく重たいことに思えて、相手の要望がはっきりしてないとなかなか実行に至りません」

mani 69さん「以前は、この世界を共有したい、色んな視点で語りたい気持ちも込めて本を贈っていましたが、大人になるにつれ、気不味くなることもあったり。難しいです」

「退屈しのぎに」という用途が案外少なかったのが意外だった。えりんぎぷーる(忘却堂)さんの「入院中のお友だちに贈りました」というのがこの項目を立てたときに考えたもので、入院している人や長期の旅行者に本を渡すのはありかと思ったのだが。これで思い出すのは、亡くなった三沢光晴が、入院した小橋建太を見舞いに行くNOAHの選手たち全員にエロ本を持っていかせたため、病室がそれでいっぱいになったという心温まる逸話である。さすがはエロ社長。

コメントで多かったのが、若い人に本好きになってもらう手助けをしたい、という意図で本を贈った方であった。飴子さん「記念日、としました。甥と姪(総勢6名)の誕生日プレゼントは毎年本にしています」高橋弥生さん「親しい友人への出産祝いに赤ちゃん絵本を贈ることにしています。少しでも未来の本好きを増やしたいので…」みとっちさん「大昔の話ですが、小学生の家庭教師を辞める時だったかな。ジャックロンドンの『野生の呼び声』を買って贈った記憶があります」ほか、多数の方から同様のご意見をいただいている。お気持ちはよくわかるなあ。

他にも気になったコメントがあったので、いくつかご紹介。

幸福な感情を保ち希望を広げるさん「就職が決まった友人にお祝いとしてウェストレイクの『斧』をプレゼントしました。ちょっとブラックな作品が好きな友人なのでそれにあわせて選びました。他にも2000円以下でのプレゼントとして本はよく選びます」

お、『斧』ですか。いいセンスだなあ。

kyarakoさん「『タイタンの妖女』と『間抜けの実在に関する文献』と『100万回生きたねこ』はこの人生で相当配ってるんですが、あるとき考えたら不気味かもと思ってぴたっと止めました」

私も『寂しすぎるレディ』を見かけるたびに買って人に渡しているのでよくわかる。

Satoshi Kojimaさん「入院するひとに、泡坂妻夫数冊詰め合わせを持って行ったことがあります」

入院患者がえらいことになる小説があったような。

コトリさん「岸本佐知子さんのエッセイそのまんまなような友人に「あなたのような本です」とプレゼントしました。大ファンになってました」

わかるわかる。

yuccaさん「図書館員です。友人へ出産祝いで絵本を贈りました。赤ちゃん絵本は選び方が難しいらしくて喜ばれました」

これはいい情報。ありがとうございます。

さて、自粛生活8日目で2週目に入った。

思うのは、家族のありがたみである。気持ちを切り替えてみると、長期旅行とかキャンプで一緒に行動しているのとあまり変わらない生活形態なので、そういう休暇を過ごしているんだ、と自分に言い聞かせながら過ごしている。キャンプなんだ、キャンプ。これはキャンプなの。だから朝食の直後に「晩飯は何にする」とか聞いたりするの。キャンプだとご飯の支度ばかりしているから。いっそのこと庭でバーベキューとかやってみたいが、隣人がすっ飛んできそうだ。

あまり暗いことは考えないようにしているのだが、いくつかの月刊誌が一回休みにする月を決めたり、大型書店が臨時休業になったりと、自分にも関係しそうなニュースが入ってきて、そのたびに将来についての不安がちょっとずつ頭をもたげてくる。考えても仕方ないことは考えないのがいちばんなのだけど。

そんな中でKADOKAWA文芸関連のポータルサイトで新連載「杉江松恋の新鋭作家ハンター」が始まった。新鋭作家はトレジャーと読んでもらいたい。新しい才能をお宝に見立てての連載ということで月二回更新の予定だ。第一回は昆布山葵『同じクラスに何かの主人公がいる』を取り上げてみた。笑える小説なのでぜひ読んで笑ってください。

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