街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年7月・清水「清水書店」訪問失敗と狐ヶ崎「不思議な古本屋さん はてなや」草薙「ピッポ古書倶楽部」みたび

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静岡県内の残り少ない未訪店の一つ、清水書店。このシャッターの中に入れる日はいつか。

7月某日

青春18きっぷを使うべく、早朝から東海道線に乗りこんで西を目指す。

遊んでばかりだって。いや、違う。仕事もしているのである。その証拠に道中読むべき本をちゃんと持ってきている。長い長い乗車時間を有効活用すべく、仕事用の課題図書を準備してきたのだ。

横浜から熱海まで直通の列車があり、それに運良く乗ることができた。ボックスシートで仕事読書もはかどる。熱海で島田行きに乗り換える。もし雲がかかっていなかったら富士山を見たいので、私は必ずドア際の南側に座る。列車の振動を全身で感じながら本を読んでいたら。

眠くなってきた。

このために五時前に起きたのだから無理もないが、仕事読書の最中である。ここで眠るわけにはいかないのだが。

気が付いたら目的地の清水駅の手前まで来ていた。

慌てて下車する。

清水駅は何度も歩いて通過しているが、下車するのはひさしぶりである。初野晴氏をゲストにお招きした全日本大学ミステリ連合の合宿以来ではないだろうか。

見覚えのある駅前からバスに乗る。静鉄ジャストラインというバスが出ており、駅前の2番乗り場に停まる路線のほとんどが向田町という停留所まで行く。そこから歩いて数分のところに、清水書店という未訪店があるのだ。

向田町の停留所で下りて、帽子替わりにしている手拭を忘れてきたことに気づいた。頭頂部を直射日光で焙られるのはけっこう危ない。早めにどこかでタオルでも買わないと、と思いながら歩き始めた。

通り道に懐古調のカフェ兼雑貨屋があった。覗いてみるとLPレコードを入れた箱が見えるが、古本は無いようである。

停留所から北に少し遡り、小川沿いの道から北西に入ったところに清水書店はあった。

閉まっている。

まだ11時で早いせいかもしれない、と思い、念のため事前に調べてあったお店の電話にかけてみたのだが、誰も出る様子がない。この店は一般の住宅の前に躯体をどんと置いたような状態になっている。事前情報によれば、背後のお宅に店主はお住まいのはずである。電話に出ないというのは、ご不在なのか。それとも、もう営業はしていないのか。判断はつかなかった。

やむをえない。ここはいったん引き上げるしかないだろう。いつまで待っていても店が開く保証はないのである。元来た道まで引き上げ、北に向かって歩き始める。ここから30分ほど北上すれば、静岡鉄道の桜橋駅に着くのだ。頭頂部の焦げ付きを気にしながら歩いていくと、数分後に横を静鉄ジャストラインのバスが通り過ぎて行った。50mほど前にバス停がある。全速力で走り、なんとか乗ることができた。予定を変更し、静岡鉄道の始発である新清水駅まで乗る。ここから狐ヶ崎まで行くのだ。

狐ヶ崎にはサブカルチャーにものすごく強い不思議な古本屋はてなやがある。今年の春に初めて訪れ、あまりの凄さに二日連続で東京から通ってしまったほどの実力である。どんだけ好きなんだ。

狐ヶ崎では結構な数の学生が下車した。夏休み前の最後の登校日だったのかもしれない。お昼どうする、マクドナルド行こうか、というような会話が交わされる中を通り過ぎる。え、マクドナルドがこのへんにあるのか、とちょっとびっくりした。それほどの静かな駅前なのである。

狐ヶ崎からはてなやまでは綺麗な水の流れる用水路の横を通っていく。狐ヶ崎の駅は谷のように窪んだ場所にあるのだが、用水路はその向こう側からこちらに流れているのである。どうなっているのかといえば、線路を越える陸橋の下に水路があるのだ。珍しい橋上水路である。電線の上では東京ではあまり見たことのない鳥が甲高い声でさえずっている。

はてなやは開いていた。事前に調べていたとはいえ安心する。二軒続けて振られるのはたまらないものがある。以前にも書いたとおりの充実した棚のお店で、眺めるだけでも目の保養になる。プロレス棚に行き、ずらりと並んだ田鶴浜弘本を観賞する。買う本は春から目をつけていた、さいとう・たかを『0011 ナポレオン・ソロ』の3巻だ。記憶にあった場所にまだ残っていた。これは私を待っていたとしか思えない。ありがたくレジに持っていくと、背につけられた値札が色褪せていて金額が読めないというトラブルが発生した。どのくらい長い間棚にいたのだろうか。

今年に入って3度目のはてなや。いくらなんでも来生たかおではないかという声もある。

ここから静岡鉄道の新静岡行きに乗る。新清水まで戻って清水駅に行くより、草薙駅で乗り換えたほうが歩く距離が少なくて済むのだ。二つ先が草薙駅である。ここにはピッポ古書倶楽部として古本も売る、子どもの本専門店ピッポがある。駅至近のありがたい古本屋だ。

今年に入って何度目かの訪問になるピッポへ。店の左側が児童書新刊、右側が古本という住み分けになっている。ここにも探求書があるのだ。

棚の記憶通りの場所にその本があった。というか増えている。探している本が計4冊。しかし値付けもしっかりしていて、すべて買うと軽く5桁になる。1冊だけでも買うか。だが、すぐ仕事に使えるわけでもない本にしては高すぎないだろうか。ここでしか見たことがない本だから次にいつ巡り会えるかはわからないのだが。などと思い悩み、結局何も買わずに店を出る。理性的な判断である。

いつ来ても開いているありがたいお店、ピッポ。

ここからさらに西を目指す手もあるのだが、今日は深入りはしないでおこうと考える。読みかけの仕事本を持って、上りの東海道線に乗った。(つづく)

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