某月某日
蜂窩織炎療養のための自宅生活はだいたい一週間に及んだ。
もともと月曜日には所用が入っていたので、外出することにした。それまでの数日間は家を出るときにもサンダルだったのだが、きちんとした会社訪問なのでそういうわけにもいかない。靴を履いてみたら、少しは痛むもののなんとか歩けそうだった。数日ぶりで地下鉄に乗って都心に出る。
その企業での用事は約1時間で終わった。帰ろうかと歩き出して、そういえばと思い出す。元は池袋と要町の間にあった書店、コ本やがこのあたりに引っ越してきているのである。
訪問していた会社は新宿区の東五軒町にあった。北上していって、有楽町線の江戸川橋付近まで行く。大きな通りから路地に少し引っ込んだところにある小さなビルの二階が目指す場所だ。わかるだろうか、と思ったが、置き看板があり、二階の外壁にも店舗を示すものなのだろう、抽象的なサインが書かれている。

建物の中に入り、階段で上がった先にコ本やがあった。要町時代の店舗は不思議な建物の作りをしていて、たしか一階にある別の事務所の中に入らないと上階に行けなかった。その事務所が閉まってしまうと出られなくなるので、夕方以降は裏の非常階段から帰るのである。
それに比べればごく普通の作りだが、棚の配置が直角ではなく曲がっているので、扉から見ると通路が枝分かれしていたり、ぐるっと回って元の位置に戻るように見えたりする。そこがおもしろく、ぐるぐると回った。
入ってすぐ左側にZINEや個人出版物、その隣が人文科学書と文庫の地帯で、右側に帳場がある。帳場の側に芸術関連の本があって、その向こうはギャラリーだった。ちょうど何かの展示が行われているようで、ずっと映像が流されている。
個人出版物らしい『胃弱辛拉麺食記』(食欲の人・編)という文庫型の本を買って外に出た。韓国の辛ラーメンをいろいろアレンジするレシピ本らしい。しばらくご無沙汰していたが、これでようやく古本屋のある日常が戻って来た。



