杉江松恋不善閑居 郡上八幡に古本屋が出現。職人町・ドアトマドbooks

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某月某日

また昨年の話である。7月に、岐阜県の郡上八幡に行った。ひと夏を通して行われる郡上おどりを見物するためで、週末ごとあちこちに櫓が立ち、町民総出で盆踊りを楽しむのだという。そのうちお盆の期間中は徹夜おどりといって、夜明けまで踊りが続くのである。さすがにその期間はまったく宿がとれなかったので、7月のこの時期に行ってみることにした。郡上おどりは名古屋や大阪からさまざまな流行歌が入り込んで現在の形になった経緯があり、芸能史的にも興味深い。

まったくそういうつもりはなかったのに、古本の神様の引き合わせか、八幡町内で古本屋を見つけてしまった。古い街並みが続く職人町を散歩していたら、仕舞屋風情の家の前に、看板が出ていたのだ。横に貼り紙があって「いらなくなった本回収します!」と書いてある。なんということだ、古本屋じゃないか。名前はドアトマドbooksというらしい。

実はその前年にも郡上八幡には来ていて、この場所は通っていたのだが、古本屋はなかったと断言できる。いつの間に、と思いながら戸を開けて中に入った。

店内はよくある、土間のある作りの家を居抜きにしたような構造だ。主体は新刊のセレクトショップだと思う。アートブックや建築書などが目を惹いた。そして右の壁際に大きな棚があり、そこに文庫を主とする古本が詰め込まれている。手に取って開いてみたら、ちゃんと値札がついていた。古本が買えるぞ古本が。

まったく思いがけない事態だったので、横溝正史『山名耕作の不思議な生活』(角川文庫)を購入することにした。もちろん持っているけど、いいのだ。

勘定をしてもらい、お店の由来をお聞きした。やはり店ができたのは、私が前回郡上に来た2024年6月以降のことらしい。この時点では古本の買い取りはやっておらず、持ち込まれた本を処分しているだけだがゆくゆくは、とのお話であった。郡上八幡にはまた行く機会があると思うので、そのときにどのような進化を遂げているか、楽しみに拝見したいと思う。

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