杉江松恋不善閑居 山形・香澄堂書店

Share

某月某日

山形~大阪ツアーの続き。

古本田がま屋を出て、歩いて山形駅の方へ戻る。翌日、真山隼人と沢村さくらの公演が近くであり、そのための前泊なのである。前に書いたように、国際ドキュメンタリー映画祭と全国吹奏楽部大会が重なっていたので、ホテルはどこも満室上程となっており、知らずに予約をした私はかなり運が良かったらしい。駅に行く途中、公演通りの左側にあるのが香澄堂書店だ。

この店に来るのは初めてなのだが、本を買ったことがある。20年くらい前に、ハヤカワ・ミステリマガジンの創刊号から300号くらいがまとめて出た。そのときに通信販売で購入したのが、この香澄堂書店だったのだ。いい買い物をさせてもらったので、いつか訪ねなければと思っていた。ようやくその機会を得たわけである。

店はガラス張りの正面が印象的で、そこにさまざまなも催しのポスターが貼られている。さながら文化交流拠点のようである。

中に入るとすぐ右に、文庫本がきれいに置かれた地帯がある。奥にも文庫はあるので、ここは均一棚なのだろう。店内は正面奧が帳場で、左右壁が高い書棚で埋められており、フロアには手前壁と並行に置かれた棚が奥へ向かって二列に続いており、その間が通路である。下駄状の棚は、向かって左手前が人文科学、右が文学書といった感じだが、さらに細かく分類されている。整理の行き届いた棚であり、見るのが楽しい。左の壁棚には手前に新書などのサブカルチャー、奧にミステリーやSFなどの珍しいものがあって、マニア度も非常に高い。帳場の前には郷土関連本のコーナーも設けられていた。

何冊か手にして勘定をしてもらう。以前通信販売でミステリマガジンを購入した者ですが、と話しかけると、もしかして杉江松恋さんですか、と店主に訊かれた。面が割れている。そうだと答え、しばらく浪曲のために山形まで来たという話をした。

米沢・山形と回ったが、県内でいちばんの老舗はどこだろうかとお訊ねすると、それは鶴岡の阿部久書店です、との答えである。なにしろ明治20年、1887年の創業だから間もなく創業140年を数える。これは阿部久書店に行くためだけにでも鶴岡を訪れなければ、と固く心に誓ったのであった。

投宿して荷物を置き、東京から山形に到着した一行と駅前で痛飲。行かなかったが、中華料理屋にまで芋煮コースがあって驚いた。さすが芋煮の国、山形である。

メールマガジンを始めました。詳しくはこちら

Share