関西行の続き。
武庫川~今津~西宮北口をまわった翌日、私は京都にいた。前夜は大阪に泊まっていたので、京阪電車で早朝に発ち、まずは嵐山にやってきたのである。インバウンドの観光客が多いため、早朝ではないと静かな京都というものにはお目にかかれない。ちょうど紅葉の季節ということもあり、嵐山の大悲閣を訪れる気になったのだ。門が開くぎりぎりに着くように計算して行程を組んだが、それが大正解であった。誰ともすれ違うことなく歩けたのはどれくらいぶりだろうか。あいにくの天候で大悲閣からの眺めは雲に塞がれていたが、紅葉目当てだからこれでいいのである。参道を降りてくると、ちょうどマイクロバスが到着したところだった。中からはぞろぞろと外国人の観光客が下りてくる。危ないところであった。
そこからバスで移動しようとしたのだが、道路が渋滞しているところでなかなか到着しない。二時間近くかかってようやく晴明神社に辿り着いた。浪曲「陰陽師」の成功を祈ってお参りをする。往路に学んで今度はバスを待たず、1㎞ほど歩いて今出川駅に至る。結局、地下鉄がいちばん確実なのだ。ここは同志社大学の真ん前なので、若い人がたくさん歩いている。ちょっと裏に入れば獺祭書房があるのだが、この日はあいにくと定休日だった。
地下鉄に乗ろうとして、駅前にはもう一軒澤田書店があることを思い出した。前に来てからだいぶ時間が経っているが、まだあるだろうか。大通り沿いなので探す手間もなく、行ってみるとあっけなく開店しているのがわかった。となれば入るしかあるまい。
澤田書房は一間口の店舗を二つくっつけたような形をしていて、その中央奧に帳場がある。大きく分ければ向かって左は小説と雑本、右は大学教科書や趣味の本などが中心だ。左から入って帳場前から右側に抜けるのが順路である。
サッシ戸を開けて中に入った瞬間に当たりの感覚がある。入ってすぐ右の棚に、今はもうあまり見なくなったノベルスがぎっしり詰まっているのだ。小説棚も時が止まったような品揃えで、昭和後期のベストセラーなどがハードカバーで並んでいる。店の中央に背の低い両面棚があって、そこも同様である。冷凍保存されたハードカバーの背をありがたく鑑賞し、右側へ。大学教科書らしい本の間にさまざまなジャンルが埋もれているので目が退屈することがない。どんな本でも選んで買えそうな感じだが、帳場前にお宝があった。昔は、KKベストセラーズなどからアダルト向けの新書が出ていた。奈良林祥のハウツー本などがそうである。昔はゾーニングの意識が薄いので『刑法入門』などの本と地続きのところに置いてあって、こども時代はどきどきしたものだ。
ぽん、と棚に差してあったのが戸川昌子『聖談とヌードの風景』(ベストセラーズ)である。古本屋の棚で見るのはずいぶんひさしぶりだ。これは「写真・一村哲也」と表紙に記されていることからもわかるように、ヌード写真と戸川の短篇を組み合わせた本である。本を買う読者の目的は言わずもがななので、活字と写真のページが半々、もしかすると後者のほうが多いかもしれない。そういう構成の本なので、復刊はまずないだろう。手元にあったと思うがなかったかもしれないので、購入しておくことにした。しかもかなり安い。隣にテディ片岡の本もあった。こちらも安い。
店主に支払いを済ませて外に出る。ここに来たのも安倍晴明のお導きであろう。神社のほうを遥拝し、帰途に就いた。



