杉江松恋不善閑居 立川談四楼独演会&ライターは書くことでしか成長できない~デッドラインまであと23日

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某月某日

金曜日。

また一日仕事をして、夕刻に外出。シン道楽亭で立川談四楼独演会に伺った。「岸柳島」「人情八百屋」の二席。「岸柳島」は悪侍に存在感があっていい。他にない魅力があり、この侍でもう一席聴いてみたいと思うほどだ。「人情八百屋」は、先日木馬亭で聴いたときよりもはるかに良くて、江戸っ子の情愛にしんみりさせられた。懇親会もあったが少しだけ顔を出して早々に帰宅する。仕事がやりかけだったもので。

メールが2本来ていて、両方とも文庫解説の依頼だった。1本は相当準備をしなければならず時間がかかるもの、もう1本はあまりかかわったことがない分野で一から勉強をしなければならないもので、もちろん両方お引き受けした。ありがたいことである。これを書ければ、ライターとして私はまた強くなる。

ライターは何で成長するかといえば、書くことによってとしか言えない。もちろん読むことも大事で、それはインプットだからだ。世の中にあるさまざまな表現をしっかり咀嚼し、わがものとしていくことは最低条件だと思う。だがそれだけでは十分ではない。アウトプットの仕方を学ばなければいけない。自分にどの程度の力量があって、どんなものなら書けるのか。その見極めをできないと、手に余るものを引き受けたときに困る。

たとえばそれまで1万字の評論を書いたことがない人は、突然依頼されても無理なのである。仕方がないので4千字二つと2千字を書いて合体させ、つなぎ目を修正するようなことになる。でもそれは1万字の評論ではなくて、4千字二つと2千字だ。同じように書いたことがない分野や、普段とは違う書き方が求められる文章などは、いざ取り掛かってみないと自分の手がどう動くかわからないのである。私も引き受けた後で、あ、これは初めての文章だ、とわかって往生したことが何度もある。場数を踏まないと学べないことは多いのだ。

初めての原稿依頼を2本もらえたことは本当に嬉しい。これでまたライター寿命が延びた。なんでも書くのでなんでも依頼をいただければ幸いである。

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