午前中になんとかProjectYHRは脱稿した。少し時間を置いて見直そうと思ったので、そのままにして外出。あいにくの雨だが、靖国神社で奉納浪曲があるのである。
九段下駅で降りて坂を上りながら神社へ向かうと、途中で浪曲仲間のKさんに遭遇、会場にはSさんご夫婦や、Aさんもいらっしゃっていた。平日正午なのにみなさん頑張る。
天中軒雲月会長が沢村博喜さんの三味線で「若き日の小村寿太郎」を演じられた。なるほど国難のために奮闘した小村寿太郎か。天中軒は二代目に「杉野兵曹長の妻」「九段の母」という持ちネタがあるけど当代はやらないしな。
ああいう戦時浪曲はたしかに愛国ものではあるのだけど、夫に死別した女性の哀しみや子を思う母の気持ちを描いたメロドラマでもあったから観衆に支持されたわけで、母子ものに通じる普遍性があるのだよな。真鍋昌賢さんが『浪花節 流浪する語り芸』(せりか書房)で寿々木米若の戦時浪曲について考察した点が非常に参考になる。
「若き日の小村寿太郎」は野外の開放空間でもしっかり声が伸び、さすがであった。やはり屋外でやる浪曲は演目を考えてもらいたいし、さまざまな角度からどう見えるかを意識することも大事だと思った。
終わって御茶ノ水まで行き、ソラシティ古本市へ。雨だが、ちゃんと開催していた。何もないかな、と思って見ていたら最後の露台に野球コーナーがあり、リング・ラードナー『チャンピオン』(荒地出版社)を発見した。すでに持っている『現代アメリカ文学全集4』と収録作は同じだと思うのだけど、でも嬉しい。購入して帰宅する。
15時からリモートで会議を行う。あるイベントに関するもので、立場上私が司会の役割になった。話しているうちに主催者側がとんでもない見落としをしていることに気づき、びっくりする。すぐに回復の連絡をしてくれたようだが、どうなったか。大丈夫か。
その後でProjectYHRを仕上げて編集担当の古翠さんにお送りする。戻ってきたら入稿の準備だ。これで喫緊の課題はなんとかなった。まだ余力があったので商業原稿を一本書いてしまう。この原稿料をもって4月に稼がなければならない金額への進捗率は44.62%に達した。メールボックスを見たら新しい単発仕事の依頼が入っていたのでありがたくお受けする。単発原稿の依頼を受けると世界から忘れられていなかったのだと安心するので嬉しい。原稿を書いて、依頼を受けたのでこの日の業務評定は1.5ということになった。
夜になっていきなり編集者から連絡が入る。こみいった話だから電話で直接伝えたいというメールだ。過去にもらったそういう連絡はだいたい連載の打ち切りか、廃刊かどっちかだった。いや、連載をしている媒体じゃないんだけどな、と訝しみながら電話を受けたが、予想外の内容だった。しきりに恐縮しておられたが、別に悪い話ではないので承諾する。最後まで驚かされた一日だった。