杉江松恋不善閑居 賃金が上がってもたぶん原稿料は上がらない

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某月某日

先週は出歩いてばかりで疲労が溜まっている気配もするし、やらなければならない仕事も積んであるので外出を控えて一日原稿書きに没頭した。朝いちばんでまず小さい原稿を片付け、次に〆切が来ているレギュラー仕事を二本。ここで力尽きて昼寝をしてしまった。やはり体力が落ちている。夜は朝日カルチャーセンターの講師仕事がリモートであったので、それで時間切れになる。食事をしてからぼんやりテレビを眺めていたら、米光一成さんが出てきたので慌てて録画する。コンパイル時代にぷよぷよ開発をした話をするらしい。眠気に負け、そのまま床に入ってしまう。

以前に某氏原稿を持ち込んだ会社から返信が来ていた。残念な結果ではあったが、非常に誠意ある対応だったので感激した。これはまたいい方向で芽が出そうだ。著者とメールのやりとりをして少し相談する。自分の仕事関連では8月に出す予定の本についてスケジュールが来ていて、いよいよ7月の予定を詰めなければならなくなってきた。とにかくお盆前に刊行に関する作業は終えてしまい、お盆から浪曲親友協会の河内音頭に行く30日までに紅楼夢の原稿を書きあげてしまうのだ。うまくいけばお慰みである。

本日のノルマは3本。最少でも2本は上げてしまいたい。昨日は3本原稿を送ったので勤務評定は1.5、6月までに稼がなければならない額への進捗率は94.00%に達した。

世間はボーナス支給の時期なのだろうか。今年は定額減税があるので積み増しでやや増額になっているのだと思う。こういうとき独立した自由業者は目に見える形で恩恵を受けることがないので、冷静に世間を見ることになる。賃金上昇は行われるだろうが、物価のそれを追い越すことは難しいのではないかと思う。原稿料というものはこの20年間下がり続けており、一回も上がったことがない。某誌の原稿料は1ページ3万円だったのが2万5千円になり、さらに内税となった。つまり実質10%の値下げである。これに対して文句を言うすべはないので、そこが渋くなったらよそで稼ぐ、ということをしなければならないのである。だから付き合う会社は多ければ多いほうがよく、世間を狭くしないほうが稼ぎやすいということになる。賃上げが行われても原稿料は変わらないだろう。世間との格差は開くばかりで、それを縮めるための方策をフリーランスの人間は日々やっているわけである。

私などは家族全員に収入があるので、一人暮らしの方よりはだいぶ恵まれている。一人暮らしのライター心情を思うと、なんともいえない暗澹とした気持ちになる。若い人はもちろん、ある程度年齢のいった方はなおさらだろう。少しでも稼ぎの場を増やせるよう、とりあえずやれることをやるしかない。まずは原稿書き、そして営業である。

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