杉江松恋不善閑居 旧聞・京橋「古本屋くま」

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某月某日

今抱えている仕事。レギュラー原稿×4。イレギュラー原稿×2(エッセイ、評論)、ProjectTY書き下ろし。

やらなければならないこと。主催する会の準備×1。

さて、1月の大阪行について。浪曲大会の翌日は、午後に大きな仕事がある。本来はそのための大阪行だったのである。午前中に時間があったので、ちょっと探索行へ。かねてより気になっていた寝屋川市の金箔書房を訪ねてみたが、残念ながらお休みであった。5日まで正月休みということで、これは仕方ない。外観を見ただけでも期待の膨らむ店構えなのだが、次回に期待しよう。

やむをえず環状線京橋駅から歩いて10分ほどの古本屋くまへ向かった。ここは昨年にも挑戦してあえなく振られた店である。この日はやっているという情報をツイッターで得ていたので、安全牌というつもりであった。

扉を開けてみると、縦に長い店内が見える。中央に棚があって仕切られている。古本だけではなくレコードなどの音盤も強い店で、LPのラックもあった。中央の棚は主として文庫で、一部がCDになっている。店内入ってすぐは左側は文学系、これが奥までずっと続いていて、人文系の科学書なども並ぶ。反対の右側はキッチンになっていて、店主らしい人がそこでコーヒーを淹れていた。来客をもてなす用らしい。取り込み中だったら申し訳ないと思ったのだが、様子を見ていると問題はないようなのでそのまま店内探索を続ける。店主が飼っているのか、来客の女性が連れてきたのかわからないが子犬がいて、足元で遊んでいた。「犬、お嫌いじゃないですか。大丈夫でしょうか」と店主が気を遣ってくれる。はい、問題ないです。可愛いですね。

で、本である。何もなかったら新田次郎の文庫本でも、と思っていたのだが、CDコーナーの隅に歌の教本を見つけた。昔よくあったもので、宴会で歌う人のために流行歌の歌詞を入れた体裁である。小唄や軍歌と並んで、浪曲の台本が入っている。ああ、昔はかくし芸大会で一節唸る人も多かったんだろうな、と感慨に耽りながら帳場でお会計を済ませる。穏やかな人柄らしきご主人に、すみませんね、今日は掃除だけのつもりで本当は開ける予定ではなかったんです、と謝られる。いやいや、押しかけてしまってこちらこそすみません。

外に出て次の目的地に向かう途中で謎の看板を発見。撮影したが、けっこう有名な場所らしくていくつもネットで記事を見た。ドイツ光線とはなんぞや。

今月も公開しました。「ミステリちゃん」2022年3月号・その1。

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