まもなく博麗神社秋季例大祭である。この1年間、同人活動を休んでいたのだが、秋季例大祭から復帰したいと思っている。同人活動は人生の活力である。やりたいことをやらないのはよくない。
しばらく間が空いたので自分の同人誌について書いてみることにした。東方Projectジャンルで、これまで8冊の同人誌を出している。すべて個人誌だ。8冊のうち1冊は評論というか書評の本である。残りの7冊は二次創作で、博麗霊夢を主人公にした日常半分、非日常半分、現実からの浮き上がり方もほどほどの感じの話を書いた。私の考える東方Projectっぽさ、というのを自分で小説にしてみたかったのだ。
何かについての小説は、その対象に依拠すべきだが、依存しないほうがいいと思っている。本家らしさというのは絶対必要だけど、(この場合は二次)創作を行うことで本体の成分を減らさず、むしろ増やすべきということだ。東方Projectというジャンルはその点が非常にうまく機能していて、二次創作で発案された設定やギャグがさらに三次、四次の創作物を生んでいるのだ。こうした拡大再生産のシステムは、ジャンルに力を与える。この逆の現象を起こさないということが、自分の同人活動における第一原則なのである。
7冊の小説同人誌には〈博麗霊夢の日々〉というシリーズ名を付与している。原作における不動の主人公である博麗霊夢をいかに博麗霊夢らしく書くか、ということがシリーズのテーマでもある。「ぼくのかんがえたはくれいれいむさん」ということだ。
シリーズ第1作『博麗霊夢はそこにいる』は2014年の秋季例大祭で頒布開始した。表紙画は〈赤色バニラ〉のくまさん、編集は〈日々徒然。〉の古翠さんである。以降もすべて同じ。この本だけゲストをお願いし〈豚乙女〉のランコさん、ランコの姉さんに寄稿いただいた。巻末収録の「言語と思考の距離」はランコさん・文、姉さん・絵の合作だ。
その他の収録は表題作を含め3作。以下簡単にご紹介しておく。
「博麗霊夢はそこにいる」
これが初めて書いた東方二次創作だ。初めてなのだから異変を起こそうと思い、でもあまり大したことのない異変がいいな、と考えた結果、命蓮寺の聖白蓮がある現象に困って霊夢を頼ってくる、という構成にした。「異変」の絵面を考えるのがとても楽しかった。なんとなくバタバタした感じを出したかった話である。
「博麗霊夢がそこにいた」
「レイアリは原点」派なので、自分の1冊目の小説同人誌にはアリス・マーガトロイドを出さなければいけないと思って書いた。アリスが出た時点でかなり目的は達成できたので、くまさんに表紙をお願いするときにはこの話について描いていただくことにした。以降の同人誌でもアリスが出せればかなり自己評価は高い。出せないときは、内容では納得していてもひそかに減点対象にしている。
「そこにいる博麗霊夢」
メインの話が2つあるので、ごく短いものをそれにくっつけたいと思って書いた。東風谷早苗と博麗霊夢を話させたかった、というだけの内容である。巻末に第三者が視点人物を務める話を持ってくることで主人公の外形描写を行う、という短篇集の形式をとってみたかったので、二人が向かい合ってお茶を飲んでいる場面を書けたことでほぼ目的は達成した。早苗さんは理知的に、霊夢さんは霊夢さんらしく書けているので、この話を書いたときの自分は褒めてやりたいと思う。
こんな感じで他の同人誌も紹介する予定である。言い遅れたが、東方Projectに関心がない方には意味不明な個所があっても一切説明はしないのでご寛恕の程を(私が過去に書いたエキレビの原稿などを見てください)。じゃあ止めた、という方はブラウザの戻るボタンを押すだろうから、それでもいいよ、という方のみ麦こがしでも食べながら次をお待ち願いたい。
(つづく)
※〈東方Project〉は同人サークル〈上海アリス幻樂団〉様の作品であり、本稿はそれに依拠した二次創作物についてのものです。原作について記述した個所の文責は、すべて執筆者である杉江にあります。
とらのあな様の委託販売リンクはこちら。2018年10月現在、在庫はあります。