過去仕事 一覧

幽の書評vol.6 エドワード・ゴーリー編『憑かれた鏡 エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談』

その鏡は見る人の恐怖を増幅させる。奇想の作家エドワード・ゴーリーが選んだ選りすぐりの怪談集 その庭にはいくつもの石板が転がされている。形状から、それが単なる板ではなく石碑であることがわかる。禿頭の巨漢が、木陰に腰を下ろして休んでいる。もう一人の痩せた男が、立ったまま彼に話しかけている。二人の会話に耳をそばだてるような位置に、正面を見せて石碑が立っている...

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芸人本書く派列伝returns vol.14 玉袋筋太郎『スナックの歩き方』

芸人本書く派列伝returns vol.14 玉袋筋太郎『スナックの歩き方』

たけし軍団の芸人は早くテレビを捨てて寄席に出るべきではないか、と昔思っていた。 ビートたけしの命によってタップダンスを習わさせられている、などという噂を聞いたころだからかなり昔のことだと思う。 その考えが正しかったかどうかといえば、率直に言えば外れだった。テレビにすっかり定着した軍団員もいれば、政界進出を果たした剛の者もいて、思ったほど寄...

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幽の書評vol.5 デイヴィッド・マレル『トーテム[完全版]』

幽の書評vol.5 デイヴィッド・マレル『トーテム[完全版]』

1970年代を代表するモダンホラー傑作が、「完全版」として甦る。現代版人狼伝説ここにあり 1970年代にデビューしたスティーヴン・キングと、彼に追随する作家たちが1980年代にモダンホラーの一大ムーブメントを作り上げた。デイヴィッド・マレル『トーテム』は、その潮流の中で書かれたホラー長篇である。作者自ら、キング『呪われた町』から受けた影響を認めている。...

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幽の書評vol.4 高橋克彦『弓削是雄全集 鬼』・柴田宵曲『妖異博物誌』『続妖異博物誌』

幽の書評vol.4 高橋克彦『弓削是雄全集 鬼』・柴田宵曲『妖異博物誌』『続妖異博物誌』

人の心の奥底に鬼の棲み処がある。安倍晴明以前に存在した陰陽師が活躍する王朝幻想小説の決定版 陰陽師というと、真っ先に名前が挙がるのが安倍晴明である。だが、晴明の名が史書に初めて登場したのは、961(天徳5)年のことにすぎない。 日本に初めて陰陽道が伝えられたのが6世紀初、空海によって「宿曜経」などの経典が日本に持ち帰られ、本格的な研究が開始された...

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幽の書評VOL.3 岩井志麻子『嫌な女を語る素敵な言葉』・森山東『お見世出し』

幽の書評VOL.3 岩井志麻子『嫌な女を語る素敵な言葉』・森山東『お見世出し』

どこかで誰かがうまくやっている。顔の見えない存在へ募らせる憎悪が、現代人の心を荒ませている。 岩井志麻子の初期作品を読んで、これは日本固有の差別構造に立脚していると書いたことがある。デビュー短篇集『ぼっけぇ、きょうてぇ』以降の、いわゆる岡山ものとは、前近代的な村落共同体が、閉鎖社会であるがゆえに村落内部で生じた歪みを解消できず、かえって増幅させていく悲...

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幽の書評vol.2 つり人出版部編『水辺の怪談2』・小池真理子『夜は満ちる』

幽の書評vol.2 つり人出版部編『水辺の怪談2』・小池真理子『夜は満ちる』

先般、KADOKAWAから刊行されている日本で唯一の怪談専門文芸誌「幽」が休刊し、同社の妖怪専門誌「怪」と合併して「怪と幽」として再出発することが発表された。30号をもって幕を閉じた同誌には、私は創刊以来ずっと書評を寄稿していたのである。多くの雑誌で連載を持ってきたが、創刊から休刊まで通してというのはたぶん「幽」が初めてだ。思い入れの強い雑誌でもあり、これか...

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芸人本書く派列伝returns vol.13 三遊亭円丈『師匠、御乱心』

芸人本書く派列伝returns vol.13 三遊亭円丈『師匠、御乱心』

2017年2月の「水道橋博士のメルマ旬報」原稿である。約2年前のこの回をもってreturnsの毎日更新をいったん止め、月曜日のみの更新とする。明日からはまた別の過去連載原稿を再録していくことにするので、よかったらまた読んでみてください。 ============================= 2016年の演芸・落語本の補遺として『円丈...

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芸人本書く派列伝returns vol.12 三遊亭円丈『円丈落語全集1』

芸人本書く派列伝returns vol.12 三遊亭円丈『円丈落語全集1』

2016年に刊行された「本書く派」芸人の著書を整理していて大事なものが抜けていたことに気づいた。新作派落語家の頭領というべき三遊亭円丈の『円丈落語全集1』である。 この本が抜けてしまった一つの理由は、円丈の自費出版だったからだ。発行元は円丈全集委員会になっており、販売元を映像作品メーカーのクエストが務めている。といっても本にはISBNコードが入...

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芸人本書く派列伝returns vol.11 『成金本』

芸人本書く派列伝returns vol.11 『成金本』

以下は2017年最初の「メルマ旬報」原稿だった。2019年もインフルエンザに罹患したが、この年もやられていたらしい。このときはまだ自分が成金メンバーの一人の聞き書き本を担当することになるなど、知る由もない。 ======================== あけましておめでとうございます。元旦早々インフルエンザに罹患したことが発覚し、強制寝正月と...

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芸人本書く派列伝returns vol.10 広瀬和生『僕らの落語 本音を語る! 噺家×噺家の対談集』

芸人本書く派列伝returns vol.10 広瀬和生『僕らの落語 本音を語る! 噺家×噺家の対談集』

これを書いている日の夜(注:2016年12月9日)、新宿五丁目BIRIBIRI寄席改めマイクロシアター電撃座は初めて女性落語家の会を開催する。落語芸術協会に所属する三遊亭遊かりさんの会だ。これまでも前座で女性落語家が上がったことはあったのだが、メインになるというのは初めてなのである。初めて尽くしではもう一つあって、遊かりさんは電撃座の「売り込み第一号...

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