杉江松恋不善閑居 木馬亭十一月定席二日目&『100歳で現役!』を書いてよかった

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某月某日

今抱えている仕事。レギュラー原稿×3、イレギュラー原稿×0。やらなければならないこと。の・ようなものの準備×1。

昨日も木馬亭定席の二日目に出かけてきた。神田伯山が出演するということで警戒してかなり早めに着くようにしたのだが、その甲斐あってベストの席を確保できた。木馬亭では最後列の左端、もしくは中央右端の通路に面した席が私の場合はベストなのである。理由はいろいろ。お目当ての一つは先月誕生日を迎えて百歳と一ヶ月になった玉川祐子・この日が誕生日の港家小そめコンビである。ファンからの要望で衝立を外して出弾き。演目は港家小柳譲りの一席「恨みの十四日」で、祐子さんが掛け声を入れると初めてと思われる客席がどよめくのがおもしろかった。祐子さんの故郷である笠間の話なので、これをかける浪曲会を地元でやりたいなあ。できないかなあ。

この日はとてもいい日だった。いちいち書かないが、しばらく音信不通になっていた人と旧交が復活したり、ちょっとこっちが親切にしただけなのに過分なお礼の言葉を頂戴したり、と人間関係がやわらかになるような出来事がいくつかあったのだ。情けは人のためならず。自分のために他人には親切にするのである。嘘だと思ったらやってみるといい。何回かに一回かはこの野郎というような反応が返ってくると思うが、逆にそんなにしてくれなくても、というぐらい感謝されることもある。狙ってやるわけではないが、たまにそういうことがあるから人間関係は楽しいのである。

帰ってツイッターを見たら、小そめさんが嬉しいことを書いてくれていた。祐子さんが、『100歳で現役! 女流曲師の波瀾万丈人生』を何度も繰り返し読んでくださっているのだという。喜んでくれているのは嬉しいなあ。百万部分の印税を貰うよりも祐子さんが喜んでくれるのが本当に嬉しい。そのために書いた本だもの。玉川祐子という人を知って、この人が喜んでくれるために自分には何ができるだろうか、と考え、そうだ自分は物書きだから本を作ろうと決めた。それで動いて形にすることができたのは、我ながら上出来な仕事だったと思う。ライターはもちろん金のために書くのだが、そういう風に人のために仕事をすることもあるのだ。というか、ここぞというときのために金になる原稿をいつも書いているのだと言ってもいい。こういう仕事が何年かに一度できればそれで私は十分である。

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