杉江松恋不善閑居 木馬亭八月公演6・7日目、玉川祐子「越の海勇蔵」に驚嘆

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某月某日

今抱えている仕事。レギュラー原稿×8。イレギュラー原稿なし。

やらなければならないこと。主催する会の準備×1。

土曜日はぎりぎりまで働いて木馬亭へ。講談の後半とモタレ以降しか間に合わなかったが、大利根勝子「田村操」が聴けたので満足である。大利根勝子は来年2月に引退することを決めており、残る舞台は1つも聴き逃せない。終演後はVintage Book Labという新しい試み

古書市が行われている西部古書会館へ。いつもの古本まつりと違ってグラフ誌やカタログなどが大きな面積を使って展示されており、新鮮だった。川崎長太郎の短篇集を三冊買う。

日曜日は朝から木馬亭へ。玉川一門会なのである。モタレに玉川祐子、トリにイエス玉川という布陣は強力すぎる。8月24日に発売となる『100歳で現役! 女性曲師の波瀾万丈人生』(光文社)のチラシを置いてもらえることになっており、担当のMさんと会場で待ち合わせしていた。出足は鈍かったのだがやがて人が押し寄せ、開演時刻には超満員に。陣取ったのがちょうどエアコン前で良かった。前のほうの席はかなり蒸し暑かったのではないかと思う。

玉川祐子は何を読むかと思っていたが、やはり「越の海勇蔵」だった。主が勇蔵のために出生の秘密を語って聞かせる場面のウレイ節がいちばん好きだと以前にもおっしゃっていた。数ヶ月前にも演じたネタだったが、驚いたことに今回のほうが断然よかった。これは前回聴いた人が口々に言っていたことなので間違いないと思う。木馬亭でトリを取ったことに満足せず、さらに研鑽を重ねてきたのだ。99歳にのびしろがあるなんて、誰が想像できる。いくつになっても意欲さえあれば人は成長できるのだということを教えられた。素晴らしすぎる。

イエス玉川は師匠である三代目玉川勝太郎とその義父でもある二代目勝太郎に関する漫談を30分、演台を置かない立ちで語り、もう浪曲はやらなのか、と思わせておいてやおら玉川のお家芸「天保水滸伝」の「平手の最期」に入った。それも、鈴に外題付けのキッカケを弾かせておいて、節には入らずに止めるというボケを三度繰り返した果てに、すっと始める呼吸。枝葉を切り捨てて平手造酒の駆け付けと非業の死を遂げる場面に絞った見事な演出だった。

誠に満足して家路へ。木馬亭滞在は約6時間に及んだ。木村勝千代独演会のチラシを撒こうと思っていたのだが、人が多すぎて果たせず。今週11日14時からです。

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