杉江松恋不善閑居 友達が減っていくのはごく自然なこと

Share

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存Evernoteに保存

某月某日

今抱えている仕事。インタビューの構成×1(イレギュラー1)、レギュラー原稿×3。イレギュラー原稿×1(調整待ち)、ProjectTY書き下ろし。下読み×2。

やらなければならないこと。主催する会の準備×1。

昨日書けた原稿はイレギュラーのインタビュー構成一本だった。丸一日潰れてしまったが、えいやっでやってしまわないと終わらない原稿なので仕方ない。ちょっと変則的な構成にしたので編集者の反応がちょっと心配である。没にされませんように。一本減ったが、次に〆切が迫ってきたものがあるので差し引きの増減はない。

書いている最中にゲラ戻しでちょっと揉めごとがあり、心が波打ったものでやや仕上がりが遅くなってしまった、というのは言い訳である。揉めごとは解決したので細かくは書かない。こういうことがあると、どうしても自分の意見を主張せずにはいられないわけだが、それを言ってしまうと面倒臭い書き手だと思われかねない、といつも不安になる。相手が若い編集者だとなおさらで、この人は将来的に自分に依頼をくれないかもしれないな、とちょっと残念に感じる。それでも主張すべきところはしないと、自営業者は娑婆がもたないのだ。

心が波打ったといえば、おかしなことを思い出してしまった。もう十年以上前の出来事である。

そのころ、定期的に通っていたあるトークイベントがあった。mixiでつながりがあったから行ったんだか、行った先で知り合いになったんだか覚えてないが、自分よりも年下の人たちと一緒に観覧して、帰りに飲むようなことが数回あった。家が近所だったのである。いや、わざわざ近所に寄ってくれたんだったか。もう記憶があやふやだ。

そうやって飲んでいるうちに、思いがけないことがあった。Aさんという男性が突然、「杉江さん、俺、Bさんと結婚します」と言いだしたのである。Bさんも観覧仲間の女性だ。そこにはもう一人Cさんという男性がいたのだが、事前に聞かされていなかったらしく、鳩が豆鉄砲を喰ったような顔をしていた。「そうなんだ。おめでとうございます」と言って乾杯した。他に言うことはないではないか。一つだけ気になったのは、AさんとBさんはたしかイベントが初対面で、出会ってからまだ二、三回しか会っていないのではないか、ということだった。しかし、Bさんは恥ずかしそうにしているものの、Aさんの言葉を否定するような様子でもない。そういうこともあるのだろうな、と納得した。

次のイベントがあり、やはり帰りに飲んだ。するとAさんが「杉江さん、俺、Bさんと別れます」と言いだした。Bさんはうつむいている。やはりCさんは聞かされていなかったらしく、鳩が豆鉄砲を喰ったような顔をしている。「そうなんだ」と返すしかない。今度は乾杯はしなかった。詳しく話を聞くでもなく、その日は解散した。

Aさんはそれからイベントに来なくなり、一回も会っていない。そのイベントは出演者同士が仲たがいして自然消滅した。CさんとはSNS上で交流があったが、直接はお会いしていない。

Bさんはライターに関心があり、何回か私の関わらない媒体で仕事をしたようである。そのうちの一つの文章を偶然見る機会があった。ちょっとこれはな、と思ったので次に顔を合わせたとき「こういう書き方をしていては駄目だと思う」という意味のことを言ったら、困った顔になり、それから連絡が途絶えた。もしかすると私の言い方が悪かったのかもしれないと気になったが、でも駄目なものは駄目だしな。

いずれもツイッターを始める前、mixi時代の話である。mixiは未成年の登録を認めたあたりから仕様がぐだぐだになっていくのが嫌で、宣言をして段階的にマイミクを外していき、使わなくなった。一人だけマイミクが残っているが、それは亡くなってしまった人で思い出すよすがのようなつもりで外さないでいるのだ。当然その人とももう会えない。

Share

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存Evernoteに保存