翻訳ミステリーマストリード補遺(26/100) フレッド・カサック『殺人交叉点』

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翻訳ミステリー大賞シンジケートの人気企画「必読!ミステリー塾」が最終コーナーを回ったのを記念して、勧進元である杉江松恋の「ひとこと」をこちらにも再掲する。興味を持っていただけたら、ぜひ「必読!ミステリー塾」の畠山志津佳・加藤篁両氏の読解もお試しあれ。

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フランス産のサスペンスを読んでびっくりした体験。『マストリード』を編纂する上で絶対に欠かせないと思っていた要素です。『殺人交叉点』は瀬戸川猛資『夜明けの睡魔』などで採り上げられたことで有名になり、最終的には三度目の新訳が出るという思わぬ結果を生みました。二回目の創元推理文庫版『殺人交差点』に、結末を予期させる訳文があると瀬戸川が指摘したからです。私もそのネタばらしを避けるため、わざわざ創元クライムクラブ版を求めて読んだものであります。

カサックには『日曜日は埋葬しない』という有名な作品もあり、これはハヤカワ・ミステリに収録されています。小説が技巧の産物であることがよくわかり、すべてが文章によるサプライズのためにお膳立てされている。そうしたものを読む快楽をぜひ一人でも多くの方に味わってもらいたいと思います。一時期のフランス・ミステリーでそうした作品が量産されていた背景はよくわからないのですが、1960年代から80年代にかけて邦訳された諸作によってミステリーの楽しさに開眼した読者は多いはずで、これもまた無視してはいけない大きな潮流の一つだと私は思っています。カサック以外の作者では『殺人四重奏』のミシェル・ルブラン、『甦る旋律』のフレデリック・ダールもお薦め。カサック、ルブラン、ダールの三つの名前を覚えておくときっと幸せになれますよ。

『殺人交叉点』を畠山・加藤両氏はこう読んだ。

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