翻訳ミステリーマストリード補遺(16/100) ヘレン・マクロイ『暗い鏡の中に』

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翻訳ミステリー大賞シンジケートの人気企画「必読!ミステリー塾」が最終コーナーを回ったのを記念して、勧進元である杉江松恋の「ひとこと」をこちらにも再掲する。興味を持っていただけたら、ぜひ「必読!ミステリー塾」の畠山志津佳・加藤篁両氏の読解もお試しあれ。

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ヘレン・マクロイは、日本では長く実態が把握できない作家でした。名作と言われる『暗い鏡の中に』以外の作品がなかなか手に入らなかったためで、最近の刊行によって長篇が多数紹介され、大きく印象が変わった観があります。特に出版業界を舞台にした『幽霊の2/3』が復刊されたのは大きく、1940年代後半から1960年代前半にかけての全盛期の作品はどれも必読です。マクロイ作品は立ち上がりが遅く、小説の前半部だけを紹介すると平凡な作品と誤解されかねません。その魅力は物語の要素が整理され、独創性の高い謎が姿を表してくる中盤から後半にかけての展開にあります。前半にセンセーショナルな謎が準備されている『暗い鏡の中に』はむしろ例外的であり、マクロイ初心者向けというべき作品でしょう。本書が気に入った人はぜひ他の作品も。熟読を必要とするがその分見返りも十分に大きい、マクロイならではの小説世界を楽しんでください。

『暗い鏡の中に』を畠山・加藤両氏はこう読んだ。

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