杉江松恋不善閑居 浅草木馬亭十一月公演三日目「玉川太福浅草演芸大賞新人賞受賞記念」

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某月某日

浅草木馬亭十一月公演三日目。本日は先般浅草演芸大賞新人賞に玉川太福さんが決定したことを受けて、その記念公演なのである。同賞を浪曲師を受けるのは、故・国本武春以来の快挙だ。太福さんが木馬亭の定期公演でトリをとるのは初めてであり、ファンが大挙して訪れるだろうということで、入場に際しては整理券が配られることになった。八月公演に神田伯山が出演したときは早朝から待機者が出る事態になったそうで、そのときは来場を諦めたのだが、今回は挑戦してみることにした。

午前九時半ごろ、地下鉄銀座線車内でツイッターを見てみると、常連のNさんがすでに整理券を取得していて、十番台だとのこと。予告では十時十五分から配布開始だったはずだが、なんらかの事情で早まったらしい。しかし今さら急ぐすべもないので、田原町で地下鉄を下り、なるべく速く歩いて木馬亭に向かう。無事に取得した整理券は三十一番だった。午前十時、ここから開場まで一時間くらい空いてしまうので、近くの喫茶店で仕事用の読書をして潰す。

午前十一時五分という指定だったので時間通りに木馬亭に着いて場内に入る。拍子抜けするほどまだ人は少なかったので、これなら整理券を配る必要はなかったのではないかと思ったほどだったが、徐々に埋まり始め、結果的にトリの太福さんが上がるころには満員となった。

花の若武者那須与一 富士実子・水乃金魚

亀甲組 国本はる乃・沢村豊子

最強主婦伝説ひまわりマート戦記 港家小ゆき・水乃金魚

甚五郎の蟹 イエス玉川・玉川みね子

仲入り

少年の歌 木村勝千代・沢村豊子

安政三組盃繁蔵出世 神田桜子

人情芝居囃子 富士琴美・沢村豊子

天保水滸伝平手造酒の最期 玉川太福・玉川みね子

「平手造酒の最期」は先日高円寺HACOの鍛声会でも聴いていたが、堂々としていて良かった。新作も好きだけど、こういう侠客伝も太福さんは大事にしておられて嬉しい。最後は新弟子時代から支えてくれている相三味線であり、師匠・福太郎のおかみさんでもあるみね子さんと並んで感謝の意を表して幕。場内には木馬亭というよりも太福さんのファンという方が少なからずいたと思うのだが、今日を楽しんでいただけたのであれば、また足を運んでくださるといいな。

その他の出演ではイエス玉川さんの出番で、本日出番のないベテランの雲月さんが場内後方で楽しそうにご覧になっていたのが印象的だった。「蟹」は礼によって序盤までで、完全版は七日の出演で、ということになりそうだ。前半で最も受けていたのが小ゆきさんだった。太福さんのファンが多めということで、新作をぶつけたのが狙い通りだったのかもしれない。若手では実子さんが珍しく前読みの位置だったが、終始朗らかな表情で演じられていたのに好感を持った。いい笑顔でしたよ。

後半で密かに楽しみにしていたのが木村勝千代さんの「少年の歌」だ。国友忠作で、貧しい兄妹の姿を描いた、いかにも戦後昭和という感じの一篇。途中で子供たちが「緑の丘の赤い屋根」と「鐘の鳴る丘」の主題歌を合唱する場面がある。こういう話、浪曲以外ではまず聴く機会がないので嬉しい。

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