街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 武蔵小山「九曜書房」・学芸大学「BOOK AND SON」他

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学芸大学・BOOK AND SONにて。

某月某日

下目黒四丁目で懸案のリサイクルショップが本も一応置いてある店だということを確認した。これで引き上げるのも味気ないので、都立林試の森公園を抜けて南を目指す。武蔵小山駅前の九曜書房が営業しているのをツイッターで確認したのである。

子供を遊ばせる家族連れで賑わう公園を縦断して真っすぐ進むと、都立小山台高校の裏手に出る。そこからグラウンド沿いに歩いていけば武蔵小山駅前で、九曜書房も学校脇にある。コロナ禍以降はかなりご無沙汰をしていた九曜書房だが、ときどき臨時休業するので、スカされたことは何度かあったのである。この日も店頭の均一棚が空になっていたのでお休みかと慌てたが、小雨が降ったので片づけただけだったようだ。

お店に入ると二人の先客がすでに回遊中である。遅れをとらぬように一所懸命に棚を見る。入って右すぐの五百円均一棚が以前見たときからほぼ入れ替えになっていて充実していた。演芸関係の本がたくさん増えている。これは何か買って帰ることになりそうだな、と思っていたところでいいものを発見した。メアリ・ジェーン・ワード『蛇の穴』(岡倉書房)だ。ワードは1905年生まれで、36歳のときに精神病院に入院した。その体験を元にした創作が本書で、1946年に本国で刊行、1948年には映画化されるなどベストセラーになった。日本への翻訳は1950年、服部達訳で岡倉書房から出ている。その後1977年に星和書店から復刊、1979年には同社から新装版が刊行された。私が持っているのはこの最も新しい版で、表紙に「昔、ひとは狂人を蛇の穴に投げ入れた。正気の人間を発狂させるような体験が、狂人を正気に立ち返らせはしまいかと考えたからだった」という一文が引用されている。1950年代に作品点数が増え始める精神病理を題材としたスリラーは、本書の影響を受けている可能性が高いのだ。その意味でも読んでおく必要のある一冊。すでに別の版であるが、これはうちに常備すべきだろう。500円なら安い安い。

九曜書房を出て、北に向かって歩き始める。学芸大学まで行って帰るつもりなのだ。目黒郵便局までたどり着いたらそこから駅まではすぐである。途中で飯島書店やすっかりZINが増えたSUNNY BOY BOOKSを冷やかしつつ歩いていると、そういえばすぐそこにBOOK AND SONがあったな、と立ち寄ることにする。

SUNNY BOY BOOKSからは目と鼻の先である。外見は瀟洒なブティックのようで、店頭にコーヒーを販売する窓口まである。実はタイポグラフィを中心にした珍しいデザイン系の書店で、棚の本には中古もある。つまり古本もあるということで仲間なのである。デザイン系の本は高いのでおいそれとは手が出ないが、写真集なども置いてあり、もしかすると買えるものがあるかもしれないのでじっくり見る。ガソリンスタンドの写真集が欲しくなったが、大きい本だったので危ういところで思いとどまった。

ここからまたはるばる歩いて帰る。途中で祐天寺・北上書房や中目黒・杉野書店にも寄ってしまったが、これは通り道ということでノーカンでお願いしたい。

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