杉江松恋不善閑居 浅草木馬亭6月公演四日目

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終演後にわっと人が出てきたので遠慮して外観を撮らなかった。代わりに番組を。

某月某日

浅草木馬亭6月公演の四日目。この日はいちばんの入りとなった。トリをとるのが天中軒雲月さんということもあるし、沢村豊子さんの二番弟子である沢村まみさんが木馬亭初舞台を踏むので、その応援に駆けつけた人もいるであろう。私も玉川奈々福さんの浪曲教室でお世話になったので、他人事とは思えない。「陸奥間違い」、弾いてもらったもの。

伊東の恋の物語 天中軒すみれ・沢村美舟

木村の梅 富士綾那・玉川みね子

清水次郎長伝 お民の度胸 玉川奈々福・沢村まみ

杉野兵曹長の妻 富士琴美・玉川みね子

仲入り

大岡政談閉門破り 東家孝太郎・沢村美舟

臆病一番槍 田辺いちか

五郎正宗少年時代 大利根勝子・玉川みね子

佐倉義民伝 宗吾郎妻子別れ 天中軒雲月・沢村美舟

「お民の度胸」はヒロインであるお民の心情をクローズアップした奈々福オリジナルの演出。「(曲師の)出来がよかったら、最後にまみさんに挨拶させますから」と言ってから始めたので緊張も高まる。素人が技術云々はわからないので偉そうなことは言わないが、前半は節を聴けてなくて三味線を弾きすぎるように感じた部分もあった。でも後半はよい出来であったように思う。めでたく最後についたてから出てきてご挨拶。

「閉門破り」はコロナ禍前の勉強会で孝太郎さんがネタおろしとしてかけたのを聴いている。そのときは過去の名人の真似を入れるなどしてもっと遊びがあったが、さすがに木馬亭なのでそこまではやらなかったか。

後ろの席でお客さん同士が品定めを話しているのを聞くともなく聞く。いろいろな浪曲観があるので、評価は分かれるものであるが、ああ、そういう感想もあるのか、などとおもしろく思う。自分としては最近凝っているのは富士琴美さんの高音域を聴くことで、休業前の四月一日に「二十四の瞳」を聴いてちょっと火がついた。この日の「杉野兵曹長の妻」もいつアレが出るか、と身構えながら聴く。

「宗吾郎妻子別れ」で、寄席の隅々にまで浸透するような雲月節に痺れてこの日はお開き。

雲月さんの構えは体をやや斜にした特徴的なもので、その姿勢から繰り出される啖呵を聴くと、ああ、浪曲の世界に戻ってきたのだな、という安心感さえ覚える。

この日は千鳥にした座席がほぼすべて埋まっていた。懐かしい顔もちらほら。本当は仕事のはずでしょう、という方もお見かけした。番組が良かったということもあるだろうが、土日はもっと入るはずだし、混雑を避けるために通うのは五日目までにしてまた来月を待とうかと思う。週末しか来られないお客さんもいるはずだし。

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