杉江松恋不善閑居 浅草木馬亭6月公演三日目

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某月某日

浅草木馬亭6月公演の三日目。客入りは一日目と二日目の中間というところ。このくらいだとコロナのことはほぼ忘れて舞台に没頭できる。実を言うと昨日は、後ろに座ったお客が痰を切る音がずっと気になっていたのだった。何度か振り返ってちゃんとマスクをしているか確認してしまった。しているのはわかっていてもついつい。

宮本武蔵 一乗寺下り松の決闘 天中軒景友・玉川みね子

源太しぐれ 国本はる乃・馬越ノリ子

水戸黄門漫遊記 尼崎の巻 港家小ゆき・馬越ノリ子

青龍刀権次 イエス玉川・玉川みね子

仲入り

田村操 大利根勝子・玉川みね子

燭台切光忠 神田真紅

萩の餅 三門柳・伊丹秀敏

貞女菊の井 東家三楽・伊丹秀敏

この日は番組の構成か、同じ曲師が続いて弾く展開でちょっとおもしろかった。伊丹秀敏二連発は、二席とも旅先で男が宿の女に面白半分でちょっかいをかけ、それがために後で嫁取りの約束を果たさなければならなくなるという話なのでおもしろかった。「つく」というやつで、落語だと考えられない。浪曲は祝儀を渡しに行く人のために演者が楽屋に下りるのを中断して待つなど、落語の席とはいろいろ違うことが起きる、というのがちゃんと聴き始めて驚いたことだった。季節にも捉われないでネタを選ぶし。

この日の儲けものはイエス玉川さんの青龍刀権次と大利根勝子さんの田村操。青龍刀権次は玉川太福さんもやるが、イエス版は権次が人生を投げている感じに凄味があっていい。田村操は自分が拾い子だと知ってしまった女性が妄執に狂って惚れた男性を破滅させてしまう話で、ひたすら怖い。勝子さんの話はある瞬間でものすごく怖くなるところがあるのだが、この話は全篇にわたって怖い。田村がちゃんと自己主張をすれば防げた話にも見えるが、当時の倫理観ではやむをえなかったか。

終了後、神保町の某社へ。ひさしぶりに雑誌の対談仕事で呼んでもらったのである。zoomとかではなくて話す仕事というのはいつ以来だろうか。ちょっと時間があったので少しだけ古本屋を見てから某社へ。なんだかんだで2時間以上話す。

外に出てみるともう9時過ぎで、周囲のお店はほとんどやっていなかった。もともと神保町は飲み屋機能が極めて悪い昼型の街ではあるのだが、それにしても早い。コロナ対策に忠実であった。地元に戻ってきたら近所の店は明かりを煌々と照らし、客引きなども出ていて賑やかな状態であった。こうやって都心部から外周に向かうにつれて規制が甘くなっていくのだろうなと思う。接待を伴う飲食店の規制、と散々に言っているが、そんなことよりもちゃんと感染経路を特定して、地域差を無くしていったほうが効果的だという気がする。

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