杉江松恋不善閑居 自粛生活35日目「本棚オーバーハング問題をどうしていますか」

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5月12日

本に関するアンケート、今回は以前より気になっていたオーバーハング問題についてである。回答数は169。

「横幅の1/3以上は出させないので落ちる心配はない」67.5%

「1/3以上出ている。無理に本を詰めて落ちさせない」7.1%

「補助板などで補って落ちないようにしている」4.7%

「運に任せている。ときどき落ちるが入れ直す」20.7%

そもそもオーバーハング問題とは何か、という疑問もおありだろうから書いておく。棚に本を複数列入れると、それ用に計算された寸法でもない限り、本の前にいくらか余りが出る。ここに本を置くと、本の背が棚に収まりきらずに突き出すことになる。これがオーバーハング問題だ。オーバーハングも本の横幅の1/4くらいだと重心は棚の側に安定しているが、1/3を超えるとふとした弾みで落ちることになる。

これがオーバーハング状態だ。

落ちる要因は複数あるが、最大のものは棚のたわみだ。丈夫な棚でも、たくさんの本が乗っかれば重量によって板がたわみ、下向きの円弧を描くようになる。オーバーハングをさせている人は本をぎゅうぎゅうに詰めるので、左右の壁板と本、そして本同士の摩擦によって安定するのである。しかし棚がたわむと、この摩擦が意味をなさなくなる。本の間が少しずつ離れてくるからだ。文庫本など小さな本ほど隙間ができやすい。背が高かったり、分厚かったりする本は、棚板がたわんでも誤差の範囲として吸収できるからである。また、本の表紙同士の摩擦も文庫とはくらべものにならないほど大きい。

しかし大きな本の場合、落ちたときのダメージは文庫の比ではないという欠点がある。人体に当たれば痛いし、本自体の損傷も激しいだろう。だからオーバーハングさせる本は慎重に選ぶ必要がある。いや、もちろんオーバーハングさせなければいいのだけど。そんなことはよくわかっているのである。

実家にいるころから私はこのオーバーハング問題に悩み続けてきた。なぜオーバーハングさせると本は落ちるのか。上記したように1/3以下の突き出しであれば重心は棚側にあるように見えるのに。考え続けた結果、棚のたわみが主因という結論に落ち着いたわけである。ということは棚をたわまないような硬いものにしたり、もしくは本が突き出してもいいように下に板をかましたりしたらいいのではないか。そうした実験も数限りなく行ってきた。到達した結論は、オーバーハングはさせないに越したことがない。もしオーバーハングさせるのなら、落ちるのは神の摂理として諦めろ。あと、怪我に気をつけろ。

回答数が示すように、そもそもオーバーハング問題について関心のある人が少なかったようだ。⇔Satoshi Kojimaさん「この心配はしたことなかったです。新鮮。今本棚を確認したら、背がはみ出てる本もなくはないですが、1/3よりはずっと出ている幅は少なかったです」のように初めて聞いたという人も少なくなかった。良い本棚生活を送ってこられたのですね。また、オーバーハングした本は箱に入れたり積んだり本棚の上に置いたりするというお声も多かった。ええ、私もそうしたいのですが、箱に入れたり積んだり本棚の上に置いたりすることができないのでオーバーハングしているわけなのです。

少数派同志の諦念に満ちた回答を見よ。

壹岐真也さん「正直、落ちてもその都度また入れて、あとは見ないようにしています。あとは積ん読行き、で。並びにルールはもう、ありません…」

さんがつさん「スペースがなさすぎるけれど、詰め込むしかないのです」

かえるちゃんさん「どちらかというと、とにかく整然と落ちている。。。」

「とにかく整然と落ちている」はまさしくその通りである。カナダの氷河が崩れて海に落下していく映像を見たことがあるだろうか。あの感じだ。落ちるときは突如、歴史が始まったときに定められていたかのような決然さをもって綺麗に落ちていく。

ミネジまとめ転載禁止さん「昔はどこもかしこも出っ張ってましたが、地震の時に落ちたら怖いので、今は腰より下の棚だけところどころ出っ張ってます。落ちそうですけど案外落ちないもんです。(必要でしたら引用可です)」

そうなのである。落ちてくると危ない。だけど、腰から下は足で蹴っ飛ばして落としてしまう可能性がある。私もそれで何度かオーバーハングを決壊させてしまった。ご同輩は用心めされよ。

自粛生活35日目

来週の月曜日までに形をつけなければならない仕事のためにひたすら資料読み。しかしこういう根気のいる作業をしていると集中力が落ちるものなので、1日1箱に限定して、本や積み重ねてある段ボール箱から本を抜くことにした。10箱くらい溜まったら一気に処分することになる。どちらも疲労がたまる作業につき、夜にzoom飲み会のお誘いがあったが起きていられずに早寝してしまう。商業原稿は、長いものは終わらず。本格ミステリー大賞の投票日だったので、なんとか回答を作って事務局に送る。あ、ひさしぶりに川浪いずみさんの「本とせいかつ」新原稿をアップしたのだった。心が洗われるようである。ぜひ読んで。

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