街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年9月・草薙「にし古書倶楽部」「ピッポ古書クラブ」

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にし古書倶楽部と私。WINWINの関係。

(承前)

9月某日。

この夏は最後の青春18きっぷ使用日になるので、有意義に過ごすべく、とりあえず函南の未訪店ブックハウスを訪れた。そこから東海道線に戻るともう午後四時近い。今日は静岡泊まりになるので、東京までの足を気にする必要はないが、それでも静岡駅には午後六時くらいには着いておきたい。なぜかって。水曜文庫が午後七時半、あべの古書店が午後八時閉店だからである。宿に荷物を置いてちょっと出かけるとしても、そのぐらいのほうが余裕があっていいじゃん。

三島駅から東海道線下りに乗り、約一時間でその静岡駅の二つ手前、草薙駅で下りる。ここでも一つ、重要な任務が待っているのである。

■疑惑の店舗を調査するのだ

私が最初に東海道を歩いた際、道沿いの目立つところに古本屋を発見した。そのときは疲れていたこともあって中に入らず通り過ぎてしまったのだが、以来何度行ってもその店には入れないのである。古書が置いてあった店舗は物置のような空き家になってしまい、その隣の骨董店だけが営業している。果たしてまだ古本屋としても営業しているのか、それとも完全に業態を変えてしまったのか。これを確認しないと気になって仕方ないではないか。その店、にし古書倶楽部の中に入ることが今回最大の目的である。

JR草薙駅から南西にすぐ静岡鉄道草薙駅がある。その踏切を越えて県道407号線にぶつかったらひたすら東へと歩いていく。草薙神社の大きな鳥居を過ぎ、しばらく行ったところにあるのが、くだんのにし古書倶楽部だ。外から覗いてみると、やはり以前古本屋だった建屋はほぼ空き家になっている。その隣に事務所があって、焼き物や軸などが置いてあるのが見えるのだが、鍵が掛かっていて中には入れない。しばらく見つめていると、念を感じたのか、中から年配のご主人が出てきて、鍵を開けてくれた。素早く中を覗くと、入って右の棚に近世のものと見られる写本があった。あれを拝見していいでしょうか、とお願いし、店に踏み込む。

完全に中は骨董屋のそれである。本が置いてあるのは前述の棚のみ。それも仏教関係の写本や大判の美術書、郷土の人名録など、一般的な古書はまったくなく、そもそも値付け自体がされていない。もしかするとこれは店主の資料で売り物ではないのではないかと思って聞いてみたところ、そうではなくて買いたい人がいれば売るのだという話であった。しかし、私のような門外漢では到底手が出ない。

早々に諦めることにして、お騒がせした詫びを言った。念のために伺ったが、たしかに私が東海道歩きをしていた二〇一三年頃までは古本屋としても営業していたが、今は骨董に一本化しているとのことである。聞きたいことが聞けてすっきりし、駅に戻った。

店舗前景。右側が営業している事務所で、以前は左側が一般の古書を扱う店舗だった。

■あの名店でついに、と感慨に耽る

草薙といえばピッポ古書倶楽部である。ここには以前から買いたいが値段の折り合いのつかない本があり、何度も足を運んでは迷って帰ることを繰り返している。約一月ぶりに訪れた店は、少し棚の配置を変えたようであった。目当ての本が違う場所に動いている。その棚の一つ上に、青蛙房の藤田佳世『巷談渋谷道玄坂』が。値付けを見ると手頃である。ようやくピッポで本が買える、と喜び、お金を支払って外に出た。

そのお祝い、というほど大袈裟ではないが、JR草薙駅まで戻って、ロータリーに面した、ワンコップという居酒屋に入る。以前からその名前と看板文字の力強さに惹かれていた店である。年配のご夫婦で切り盛りをされていて、伺ってみれば男性のお父様が始められたのが六十年前、引き継がれてからもう五十年になるという。もちろん草薙駅界隈では最も古い店だ。東京から来て、以前からお店が気になっていました、と話すと喜んでくださった。

お勧めということで名物のみそ煮込みをもらい、もう一品、びっくりコロッケなるものも頼む。単純に言うとコロッケカレーの頭のみ。つまりライスのないカレーで、俵形のコロッケにルーがかかり、多めのキャベツと福神漬けが添えてある。このあと静岡でも一杯やる予定がある。しかしこれは見事なつまみなので飲まないわけにはいかず、大瓶のビールを二本空にしたのであった。

この店名を見よ。ワンカップ、ではないオリジナリティに改めて感銘を受ける。

これがびっくりコロッケだ。左上が煮込み(並)。

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