杉江松恋不善閑居 20171027『絶滅危惧職 講談師を生きる』が書店搬入

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前日は何をしていたのか思い出せないが10時に起床する。朝型の自分としてはすこぶる遅い。午から外出予定だったので慌てて原稿を書く。基本的に金曜更新の肚づもりをしているweb本の雑誌の「今週はこれを読め! ミステリー編」である。この連載、ウィークデイ更新なのだが、火曜日はSF編の牧眞司さん、水曜日はエンタメ編の松井ゆかりさんと決まっているので、それとかち合わないようにすると月、木、金のどれかということになる。月曜日は祝日で潰れることが多く、木曜日は月2回の講師が入っていて落ち着かないので、どうしても金曜日になるのだ。ところが金曜日は「今週中になんとか」という〆切と重なる場合があって、とこれは時々抜けてしまう更新の言い訳である。12時は無理だったが、なんとか午後いちで書き上げて送稿する。今週はステファン・グラビンスキ『火の書』(国書刊行会)

午後から早川書房にお邪魔することになっていた。田口俊樹さんが「ハヤカワ・ミステリマガジン」に過去掲載された短篇を訳し直す連載をされており、その作品選定と解説を任されているのである。早川書房の編集部の隅に陣取ってHMMの過去号を見返す。実は同じものはだいたい持っているのだが、倉庫に預けてしまっているので急ぐ場合は見せてもらったほうが早い。ページをめくっていると顔見知りの編集者が何人も前を通っていく。今回は3篇くらい候補を見つけられた。午後5時で切り上げる。今日は新潮社そばの「la kagu」で神田松之丞『絶滅危惧職 講談師を生きる』の刊行イベントなのである。10月27日は版元から各書店への搬入日だ。早いところだともう店頭に並んでいるはずで、神保町あたりで確認してから行こうかと思ったが、余裕がなくなったのでそのまま神楽坂へ向かう。

集合は午後6時だったが、ちょっと前に着いた。la kaguの会場では私以外もう揃っていて、松之丞さんは高座のチェックをしていた。いったん引き上げ、控室になっている新潮社の本館2階へ。会議室の一隅に姿見が置いてあった。さすがにそこで着替えていただくわけにはいかないだろう。松之丞さんは別室に。待っていると編集Kさん、元担当のHさんと、11月の国立演芸場公演を手掛けているいたちやさん、渦産業の木村万里さんがいらっしゃる。いたちやさん、木村万里さんとは初対面だったのでご挨拶を申し上げた。

午後7時開場。la kagu2階の半分はお店になっていて、買い物をしているお客さんがいる。BGMも流しっぱなしだったので、とりあえず切ってもらう。最初の約30分は松之丞さんと私のトークである。松之丞さんに私がインタビューされる形で進めてもらう。ここのところ『ある日うっかりPTA』関係でインタビューづいているのだが、この本についてのインタビューは初めてである。松之丞さんがインタビューアを務めている動画は前にも見たことがあるが、聞き上手である。事前打ち合わせをまったくしなかったのだが、なんとか数分押しぐらいで収まった。la kaguの公式ツイッターに上がった写真を見たら、私が大笑している写真ばかり使われていた。まあ、大笑いしていたのだが。

そこから松之丞さんの高座である。2席のお約束だったということで、最初は「トメ」だった。松之丞さんは新作講談封印を宣言されていて、実は貴重な機会である。「トメ」になったのはたぶん、『絶滅危惧職 講談師を生きる』のまえがきで私が、初めて聴いた一席がそれだと書いたからだろう。常連客の割合がこの日は低かったらしく、その希少さは今一つ伝わっていないようにも見えたが、さすがに最後はぎゅんと〆て終わる。

そこからのもう一席は『赤穂浪士伝』から「神崎詫び証文」である。初夏に箱根を越えた際、途中の甘酒茶屋にこの故事を伝える展示がしてあった。それを思い出しながら聴いたのだが、この読み物では浜松の出来事ということになっていた。そういう型なのだろう。la kaguでの講談は初とのことだが、隣の店舗から聞こえてくる買い物客の会話が少々気になる瞬間もあった。しかし雑音で客の気が逸れそうになると、松之丞さんは声の調子を上げて一気に引き戻す。お見事であった。馬喰・丑五郎の墓参で読み終わり。お客さんが大きな拍手を送る。

終演後はサイン会である。ここでハプニングがあり、サインをするのは本来松之丞さんおひとりの予定だったのが、お客さんからご希望があったので、私も急遽横に並んで書かせていただくことになった。たぶん、最初で最後の2人並んでのサイン会である。会場のお客さんのほとんどが本を購入してくださった。ありがたいことである。

控室に引き上げ、そのままお開きとなる。松之丞さんを見送り、私も神楽坂を後にした。東京創元社のパーティが近くであったはずだが、二次会などには顔を出さず。途中、東新宿のラーメン屋・小次郎で軽く一杯。ここはホッピーセットが400円なのである。中が250円、2回お代わりしても500円で合計900円だ。いつもはセットに中を3回お代わりするところなのだが、少々眠かったので2回で止める。うつらうつらしながら帰宅すると、子供が起きていたので一緒に録画してあった「ウルトラマンジード」を何話か観る。午前1時半就寝。新刊搬入日、おしまい。

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