某月某日
午前中から出かけてやっせやっせと錦糸町駅を目指す。ここに来るときはいつも秋葉原まで出てそこから総武線だったのだが、よく考えると渋谷駅から地下鉄半蔵門線で一本だ。今度からはそうしよう。錦糸町に何があるのかといえば楽天地があるのだが、その下のPARCOでeast TOKYO BOOK PARKという新しい古本まつりが始まっているのである。期間は十一月の八日まで。いつもお世話になっている駒込の青いカバさんや、代々木公園のリズムアンドブックスさんなど、若手の業者が複数出店するとのこと。期間が長いので途中補充もあるだろう。楽しみである。
入ってみると、吉祥寺PARCOの古本まつりを1.5倍くらい大きめにしたような会場で、絵本や洋書なども多く並んでいる。ざっと見て、木村二郎の滞在ルポ『ニューヨークその日暮らし』と赤塚不二夫『赤塚不二夫の天才バカ本 ベラマッチャ・エッセイ+ニャロメ小説集』を拾う。後者は赤塚先生ではなく長谷邦夫さん筆のはずだがこれでいいのだ。そして木村二郎本は絶対家にあるが発掘できないので買うことにする。会計に向かおうとしてリズムアンドブックスさんの棚を通りかかって、あるものが目に入る。立川談志幻の夜のタウンガイド『東京横浜夜をたのしむ店』だ。談志は絶対に書いてないけど。私が以前買った時よりも安い値付けなので、これは誰かが必要とするだろうと購入を決定。横にあった青春出版社の『世の中与太郎でえじゃないか』と一緒にレジに持参する。いい買い物をしてしまった。
錦糸町から総武線で一つ目、亀戸のカメリアホールが本来の目的地である。ここで玉川奈々福さんが自作の長編浪曲「悲願千人斬りの女」を通しで読むのだ。小沢信男が歌人・松の門三艸子について書いた評伝を浪曲台本に起こした作品である。本来は四話から成るのだが、最初の一話は三艸子若かりし頃の話ということで、奈々福門下の奈みほさんがあらすじを口上として述べる。そして二話目から口演開始である。連続読みということを意識してか、一話目は節少な目で筋に客が入りやすく、感情の高まりや人間関係のもつれが主となる後半に節を多めという演出で、長丁場があっという間だった。阿保陀羅経やさのさの節回しも入って江戸情緒もたっぷり。コロナ仕様であったが客席も満員御礼状態で、拍手も盛大であった。
終演後、いつものTさんと錦糸町で反省会。『東京横浜夜をたのしむ店』はTさんの手に渡った。求めてくださる人のところに行く本は幸せである。