街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年2月・竜ヶ崎「竜ヶ崎古書モール」

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抜けるような青い空。吹き抜ける風。仕事そっちのけでやってきた男。

ツイッターに流れてきた情報で、茨城県の竜ヶ崎市にある竜ヶ崎古書モールが近々閉店することを知った。

閉店してしまうのか。

いや、まだ間に合うじゃないか。遠いといっても飛行機に乗らないと行けないような場所ではないし、鉄道で行っても一時間半ぐらいしかかからない(調べた)。これは絶対に来いということだと確信し、報せを聞いた翌日には常磐線に乗っていた。

竜ヶ崎は関東鉄道竜ヶ崎線の終点になっている駅だ。終点といっても竜ヶ崎線には佐貫、入地、竜ヶ崎の三駅しかなく、営業キロも全長で4.5kmしかない。本当に小さなローカル路線なのである。その駅近くにリブラという商業施設があって、その二階が広大な古本屋になっているという。ツイッターで見た情報だと、リブラ自体が淋しいことになっていて、施設としての存続が危ぶまれる水準なのだそうだ。古書モールの閉店がそれと関係するのかどうかはわからないので、とりあえず行ってみるしかないのである。

平日の午後二時半すぎ、竜ヶ崎駅に降り立った。駅前は広々としていて、確かに繁華街といえるような栄え方はしていない。しかしそれは地方都市では珍しいことではなくて、歴史のある街だと主要な公共施設や商業地域は駅から離れた場所にあるものなのだ。ただし、駅前には何もない。竜ヶ崎はコロッケを名産品として売り出していて、関東鉄道の車内でも驚くくらいにそれを押し出していた。できればお土産に買って帰りたかったが、残念ながら周辺で買える場所はなさそうなのであった。

吊り革もコロッケなのです

まあいい。目的はリブラであり、古書モールなのだ。

市街地の中心部ではなく、線路を今来た方向に少々戻ったところにそれはあった。引き込み線の先にある車両基地の前を通り過ぎてしばらく行くと、駐車場が見えてくる。その向こうにあるのがリブラだ。ショッピングモールというか、スーパーを巨大にしたような造りである。一階の、こちらから見えている側のガラス窓には子供向けの遊戯施設が入っている。その横から建物に入っていくと、すぐ右にはトレーディングカードのお店があった。販売だけではなく、奥にはカードで遊べるスペースも設けてある。時間が早かったからかお客さんはまばらだったが、誰も来ないという印象ではなかった。

カードの店を出ると背の高いCD棚が目に入り、その向こうに「コミックどれでも80円」という貼り紙が見える。これが古書モールなのか、と思ったがそうではなく、売り場の会計は近くの洋品店に、という指示が書かれていた。このほかにもアウトレットの看板があったし、なんだか建物全体で古物商を推進しているような塩梅なのである。

その奥にエスカレーター。といっても現在は稼働していないので、階段として使われている。ちゃんと掲示をして施設が、階段として使え、と言っているのだから、素直に従うのである。しかしご存じのとおりエスカレーターは階段として昇ると非常に歩きづらい。

二階に上がると、何もない空間が広がっていた。なんらかの売り場が撤去された後のようで、はじのほうに洋服のラックなどがあってSALEの貼り紙がしてある。その空間を抜けると、ようやくお目当ての竜ヶ崎古書モールなのだ。おお、ようやくたどり着いた。

お店の感じはデパートの古書市を思い浮かべていただければいい。島がいくつかできていて、中には皿などの骨董や、LP・EPのレコードが置かれたところもある。中央に通路があって、向かって右側が本以外の物品が多い区画、右に比べると奥行のある左側が本専門の区画である。入口に近いところに看板があり、「2月20日閉店」「古書モール全品50%OFF」と手書きで記してあった。

広い店内の棚配置をすべて記すのはあまり意味がなさそうだ。デパートの古書市と書いたとおり、島ごとに特徴がそれほどあるわけではなく、ジャンルも被っていることが多いからである。気が付いたことだけ書いておくと、入口近くの平台にノベルスが大量に置かれているのがまず気になった。最近では落日の感があるノベルスだが、全盛期のものやそれ以前の珍しいレーベルなどもあり、目が引き付けられる。もしかすると藤原審爾なんかあるかも、と期待したのだが、それはなかった。

特にこれが強い、というものはないようなのだが、個人全集の不揃いや、戦記もの、郷土資料関係などは魚影が濃いように感じた。私はもうそれほど収集の必要を感じてないので熱を入れて見なかったが、日本のミステリー旧作などは探せば収獲がありそうである。見ていたら陳舜臣『三色の家』の講談社初版があった。誰かに押し付けるつもりで持って帰る。それ以外の収獲では、C・S・フォリスター(フォレスターではない)の海洋軍事ノンフィクション『決断 ビスマルク豪最後の9日間』(フジ出版社)が。そういえば昨年、つちうら古書倶楽部に来たときもフォレスターのノンフィクションを拾ったのだった。茨城県に来るとフォレスターが見つかるというジンクスか。

小説ではないが見つかって嬉しかったのは『生きている貞丈』だ。講談師の五代目一龍斎貞丈が亡くなった際、息子の貞花(後に六代目貞丈)が刊行した記念本であり、非売品と奥付に書いてある。ネット古書店でもよく見かけるものだが、実際に店頭で拾えたのは収獲であった。箱から出すと貞丈の似顔絵。けっこうドキッとする。

このほかにも文庫などで人に押し付ける目的のものを何点か買った。値付けは安く、100円から高くても500円である(もっと高いものももちろんあったが、守備範囲が異なるので買わず)。これが半額になるわけで、会計をしたら2500円に行かなかった。ひさしぶりに古本屋で買い物をしてしまったなあ、と思いながらまたエスカレーターの階段を降りる。

総体としての印象は、たしかにそれほど勢いのある商業施設ではなかったが、廃墟扱いは気の毒、という感じであった。古書モールは2月20日で閉店だけど、リブラ自体はそれ以降も存続するようだし。なので廃墟ファンとか寂れたショッピングモールファンにはちょっと物足りないかもしれないが、竜ヶ崎までは意外とすぐである。気が向いたら休日などに足を延ばしてみてもらいたい。私は利用しなかったが、駅でレンタサイクルの貸出もしているようなので、中心街や史跡などを巡り、竜ヶ崎コロッケの食べ比べをするのも一興だろう。

とりあえず長年の宿題だったお店には行くことができた。実を言うと現在水戸街道を歩いている途中で、今は佐貫の一つ手前の駅、藤代まで来ているところなのだった。佐貫まで歩いたら竜ヶ崎にも、などと思っていたが閉店前に来ることができてよかった。

めでたしめでたし、と呟きつつまた関東鉄道の乗客となる。今日はもう一軒、行かなければならない場所があるのだ。

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