翻訳ミステリーマストリード補遺(30/100) デズモンド・バグリイ『高い砦』

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翻訳ミステリー大賞シンジケートの人気企画「必読!ミステリー塾」が最終コーナーを回ったのを記念して、勧進元である杉江松恋の「ひとこと」をこちらにも再掲する。興味を持っていただけたら、ぜひ「必読!ミステリー塾」の畠山志津佳・加藤篁両氏の読解もお試しあれ。

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『マストリード』を発表年順にしてよかったことの一つに、その時々の流行がラインナップに反映されるということがあります。戦争冒険小説であるアリステア・マクリーン、本質的にはスリラーですが主人公像に冒険小説の要素を色濃く持ったディック・フランシスなど、この時代の主流が何であったかがよくわかります。デズモンド・バグリイ『高い砦』は、後に北上次郎氏が〈活劇小説〉として定義することになる冒険小説の典型として、100冊にはどうしても入れたかった作品でした。極端に切り詰めた冒頭の状況説明、そして読者を休ませず次々に事態を変化させていく書きぶりなど、後続作家に大きな影響を与えた作品だと思います。その意味では現在、デビュー作『ゴールデン・キール』や『マッキントッシュの男』『スノー・タイガー』といった他の作品が品切状態になっているのは非常にもったいない。バグリイに学ぶことはまだまだあると思うのですが。

『高い砦』を畠山・加藤両氏はこう読んだ。

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