翻訳ミステリーマストリード補遺(22/100) カトリーヌ・アルレー『わらの女』

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翻訳ミステリー大賞シンジケートの人気企画「必読!ミステリー塾」が最終コーナーを回ったのを記念して、勧進元である杉江松恋の「ひとこと」をこちらにも再掲する。興味を持っていただけたら、ぜひ「必読!ミステリー塾」の畠山志津佳・加藤篁両氏の読解もお試しあれ。

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アルレーが新刊で読めたのは1980年代末ごろまでで、『狼の時刻』などは〈創元ミステリ’90〉叢書の1冊として、ハードカバーで刊行されたりしています。2時間サスペンスの初期には、コーネル・ウールリッチとともにドラマ化もよくされていましたし、探偵の出てこない、巻き込まれ型のミステリーの魅力をアルレーで知ったという読者も過去には多かったはずです。

『わらの女』は犯罪計画に巻き込まれたヒロインの物語で先が読めない楽しさがあり、確かに厭な展開ではありますが、一度本を開いたら絶対に最後まで読まざるをえなくなる元祖ページターナーのような作品です。アルレーにはこのように、物語のおもしろさをとことんまで味わえるたまらない魅力があります。「悪女もの」という印象の強い作家ですが、多面体のほんの一面にすぎません。冒険活劇あり犯罪小説ありと1作ごとに作風が異なり、読めば読むほどはまっていくはずです。ジェイムズ・ハドリー・チェイスにも似ていますが(プロフィールを秘匿したがる癖もそっくり)、かのイギリス作家よりもさらに奥行きが深い印象です。フランス・ミステリーの真の実力を知りたければ、まずアルレーを数冊手に取ってみるべきでしょう。『わらの女』を読んだ方が古書店へと急いで走っていく姿が目に浮かびます。

『わらの女』を畠山・加藤両氏はこう読んだ。

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