翻訳ミステリーマストリード補遺(21/100) パトリシア・ハイスミス『太陽がいっぱい』

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翻訳ミステリー大賞シンジケートの人気企画「必読!ミステリー塾」が最終コーナーを回ったのを記念して、勧進元である杉江松恋の「ひとこと」をこちらにも再掲する。興味を持っていただけたら、ぜひ「必読!ミステリー塾」の畠山志津佳・加藤篁両氏の読解もお試しあれ。

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リプリーものの映画では『アメリカの友人』もお薦めなのです。監督はヴィム・ヴェンダーズ、リプリーを演じるのはなんとあのデニス・ホッパーですよ。

トム・リプリーは、社会の倫理と自分に内在する行動規範とが対立するときには常に自分の方を選択するという人物で、単純な犯罪者キャラクターとは一線を画しています。ピカレスク小説の主人公が常に社会と対立するように描かれているのに近いと私は感じます。内面を掘り下げていってもおそらくは虚無であり、リプリーは常に何かの鏡像として存在します(だから自己愛的な傾向のある人の目には彼は究極のエゴイストとして映りますし、皮肉な読者には社会現象のカリカチュアライズに見えるでしょう)。シリーズ後期の作品『リプリーをまねた少年』などにも顕著ですが、彼は常に自身を否定し、自己存在のパロディを演じ続けることで新しく生まれ変わっていったのでした。リプリー・シリーズを追いかける行為には、真のキャラクター小説を読む喜びがあります。何度も何度も読み返したくなる作品だと思います。

『太陽がいっぱい』を畠山・加藤両氏はこう読んだ。

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