翻訳ミステリーマストリード補遺(15/100) パット・マガー『七人のおば』

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翻訳ミステリー大賞シンジケートの人気企画「必読!ミステリー塾」が最終コーナーを回ったのを記念して、勧進元である杉江松恋の「ひとこと」をこちらにも再掲する。興味を持っていただけたら、ぜひ「必読!ミステリー塾」の畠山志津佳・加藤篁両氏の読解もお試しあれ。

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先人たちが海外ミステリーの翻訳・紹介に尽くしてくれたおかげで、私たちは今豊かな翻訳文化を甘受することができています。それはとてもありがたいことなのです。ただ、戦争によって停まってしまっていた時計の針を速く戻そうとするあまりに、一部の作家・作品についてはとても狭い概念でくくられてしまい、本来の魅力が十分に伝えられずにきたという反省があります。『探偵を捜せ』『被害者を捜せ』などの〈変格〉の一面ばかりが喧伝されたパット・マガーはその第一の被害者ではないでしょうか。そうした趣向の部分だけを取り出すと、いかにも作品の構造に頼った一発屋的な作家に見えてしまいます。しかしマガーの最大の美点はそのような部分ではありません。今回お二人が評価してくださったようなホームドラマ、女性の結婚観といったライフスタイルについての小説という一面(さらにいえば、当時の文化が如実に反映された風俗小説としての素晴らしさ)こそがマガーの魅力であり、それがミステリーのおもしろさと直結しているところに読むべき価値があるのです。本書以外の作品も、どうぞお試しあれ。

『七人のおば』を畠山・加藤両氏はこう読んだ。

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