街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 石川台「タバネル」・田園調布「田園りぶらりあ」と浪曲日本橋亭

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石川台・タバネル。窓の絵がいい感じ。

某月某日

大相撲九月場所が始まるにあたり、日本浪曲協会もお江戸日本橋亭での定期公演を「九月場所」として相撲ネタ特集を組んだので、これは行かねばなるまいと駆けつけた。とても賢い私は、開演前に打ち合わせを入れることも忘れない。日本橋コレドの誠品書店で編集者と待ち合わせ、猿田彦カフェでしばし相談する。仕事だ。打ち合わせに来たからこれは仕事なのだ。その帰りにたまたま浪曲に来てしまったから不可抗力なのだ。

じゅうぶんに人間距離を取り、入場も一定の間を空けてという念入りな態勢で開場、館内のアナウンスも怠りない。東家三楽さんの一番弟子、富士実子さんががんばっている。

双葉山 東家三可子・馬越ノリ子

雷電小田原情け相撲 東家一太郎・東家美

仲入り

人情佐野山 花渡家ちとせ・馬越ノリ子

一本刀土俵入 玉川こう福・東家美

ちとせさんの「人情佐野山」は落語にもある話だが、佐野山の恋愛絡みになっているところが浪曲のオリジナル部分である。「一本刀土俵入」はつい先日三門柳さんでも聴いている。民謡で鍛えたこう福さんにはよく合った読み物だと思う。

聴き終えて外に出る。最寄り駅は三越前なのだが、ちょっと歩けばJRの神田駅である。そこから山手線で五反田まで出て、東急池上線に乗り換える。十分ほど乗ると石川台駅だ。ここに昨年、タバネルという古本屋ができていたのである。知らなかった。池上線は古本屋が手薄な沿線で、戸越銀座の小川書店くらいしか思いつかない。実にありがたいことである。駅を出て南に商店街を進み、一旦くだった後で丘になっている道を上り切った住宅街の中にお店はある。樹の生えた前庭の奥、静かに店を開けている佇まいがなんともいい風情である。

お店は奥に長く、左側の壁一帯が絵本や写真集などの大型本、右側が海外文学など諸文芸、文庫の棚である。大型本棚の奥には漫画本のコーナーもあり、店主のご趣味なのか長新太が充実していた。漫画といっても少年・少女誌ではなく青年誌系である。

暑かったでしょう、と冷たいお茶を出してくださったのをありがたくいただき、じっくりと棚を見る。文庫棚でちくま文庫の赤瀬川原平『ごちそう探検隊』を見つけたのでそれを購入する。勘定を済ませて外に出るとき、近所の方らしき男性が訪ねてきていた。国勢調査のことでいらっしゃったのだという。

ここから石川台駅に戻ってもいいのだが、すんなり帰るのも味気ない。中原街道に出て、西を目指すことにした。まっすぐ行けば田園調布である。田園調布から中原街道の流れは、以前に「水曜どうでしょう」の東京ウォーカー二泊三日70kmを歩こうとしたときに逆に辿った。あれもちゃんと高輪プリンスホテルから再開しなくては。

一時間ほど歩いてたどりついたのは、言うまでもなく東横沿線を代表する名店、田園りぶらりあである。威風堂々とした店構え、しばらくご無沙汰していたのでありがたみも一入だ。人文科学系の学術書が強い店であり、探しているものがあるのでじっくりと拝見する。探求書は見つからなかったが、演劇・演芸関係の棚で櫻川忠七『たいこもち』(朱雀社)を拾った。これは持っていなかったはず。幇間関係の本は手薄なのでありがたく頂くことにする。値付けも安いしいいぞ。お、序文は川口松太郎か。これはいい買い物だ、と本を改めている間にどんどん欲しくなっていく。

店を出たらもう薄暗くなっていた。坂を上って田園調布駅へ。打ち合わせのお出かけおしまい。帰りにいろいろ寄り道しちゃったなあ。

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